ひとつのモチーフで対比させる脚本家・生方美久の手法
脚本家・生方美久は、ひとつのモチーフを使い“対比”をさせるのがうまい。今回、題材となったのは、美容院。第5話の冒頭では、海(泉谷星奈)と2人で暮らしていた水季が、お金と時間がないせいで、なかなか美容院に行くことができなかったという回想があった。
その後、夏が実家に帰ったとき、母のゆき子(西田尚美)が「お金と時間ないと、気持ちまでどんどんすり減っていくの。全然、美容院行けないし。行ったら行ったで罪悪感すごいし。あの頃のお母さん、なんか嫌だったでしょ? 綺麗じゃなくて」とシングルマザー時代の葛藤を吐露していた場面も。対して、弥生は自由に美容院に行き、カラーだけのはずがトリートメントまで追加でお願いできてしまうような時間的・金銭的余裕がある。
美容院に行くのさえ躊躇していた水季とゆき子。そして、ゆったりと美容院で自分磨きに精を出せる弥生。“隣の芝生は青く見える”じゃないけれど、ある人にとっての当たり前はある人にとっては当たり前ではなかったりする。
しかし、お母さんになったからといって美容に時間やお金をかけてはいけないわけじゃない。髪の毛が綺麗だとテンションが上がるし、子育てにもよりポジティブな気持ちで向き合えるようになることだってあるだろう。だからこそ、美容に時間やお金をかけることに罪悪感を抱かなくてもいいような世の中になってほしいと願ってしまう。
余談だけれど、弥生が髪を切った美容院は、本作と同じ『silent』チームが手掛けた前作『いちばんすきな花』(フジテレビ系、2023)の夜々(今田美桜)の勤務していた”Snail”で、世界観の繋がりを感じて嬉しくなった。