生前の関係性よりも”血縁”が優先されてしまう
水季の生前、シングルマザーとして彼女を支えていた津野(池松壮亮)。彼が、水季に対して恋愛感情を抱いていたのかは定かではないが、水季だけでなく、海にも深い愛情を持っていたのは間違いない。
「血でも法律でも繋がってないですからね。弱いもんですよ。そばに居ただけの他人なんて」
津野の言葉を聞き、“血縁”について考えさせられた。筆者も、知人の葬儀に参加したとき、“他人”の弱さを身にしみて感じたことがある。毎日のように会っていた“他人”よりも、年に1回会うか会わないかくらいの“血縁者”の方が、近くで故人を見送ることができるのだから。
それと同じで、津野がどれだけ近くで海の成長を見守ってきたとしても、“血縁”がある夏の方が父親としての適正が高いと判断されてしまうのだ。津野はきっと、水季が子宮頸がんと戦っていたことも知っていたのだろう。それなのに、何も知らなかった、海の存在さえ最近になってようやく知った夏の方が、今は“内野”にいる。
家族になるって、なんだろう。ステップファミリーの月岡家や、血縁がない海のお母さんになろうとしている弥生。そして、いちばん近くにいたのに、“外野”になってしまったことに複雑な感情を抱く津野。『海のはじまり』は、それぞれの視点から家族について考えさせられるドラマだ。
(文:菜本かな)
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