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若葉竜也の”役者としての誠実さ”

©カンテレ
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『愛がなんだ』や『街の上で』など、主に今泉力哉監督の作品に数多く出演し、映画ファンから絶大な支持を受ける若葉竜也。前述した通り、民放の連続ドラ出演は珍しく、バラエティ番組への出演に至っては皆無だ。若葉は他社のインタビューでその理由を、美味しくないものを美味しいと言ったり、面白くないものを面白いと言ったり、嘘をつくことによって本当に感動を伝えたい瞬間の言動に嘘が混じることを避けるため、と語っている。

本作の番宣で朝の情報番組に出演した際にも、若葉の自然体な姿が賛否を呼んだが、それは俳優としての誠実さの現れ。そんな若葉だからこそ、杉咲が言うように人が見過ごすようなところに感動や幸福を見つけられるのだし、その唯一無二の感性に基づく演技で多くの人の心を揺さぶってきたのだ。

幅広い役をこなす若葉だが、今回演じる三瓶は今まで以上にハマり役である。一見ぶっきらぼうで取っ付きにくいが、若葉と同じように正直で嘘がない。可能性は全て提示し、希望的観測でものを言ったりしないので、患者としては一番ありがたいタイプの医者だ。

ミヤビが復帰できるという判断も、彼女が脳外科医として働いていた頃の知識と技術を失っていないという事実に基づくもの。ミヤビはそんな三瓶に背中を押され、レナのバイパス手術で縫合を成功させる。

レナも完全には回復していないものの、自身のSNSでファンに向けてメッセージを送った。その姿を見て涙を流すミヤビに、「繋がりましたね。川内先生の今日が、明日に」と笑いかける三瓶。初めて見せた彼の笑顔があまりに優しく、もらい泣きしてしまう。近年の医療ドラマの中でもかなり本格的で終始緊迫感はあれど、暗闇の中に一筋の光が差し込むようなラストだった。

杉咲や若葉をはじめ、主要キャストからゲストに至るまで実力派が勢ぞろいしている本作。映像の彩度も抑えめでドラマの世界観に調和しており、まるで1本の映画を見終わったような満足感があった。X(旧Twitter)で「#アンメット」が、世界トレンド1位を獲得するなど、近年稀に見る傑作誕生の瞬間に立ち会えたこの感動を、私の心は一生覚えているだろう。

(文・苫とり子)

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