「技能賞」1人目は
青年期のベキ(乃木卓)役・林遣都
最後は「技能賞」。まず推したい俳優がベキの青年期(乃木卓)を演じた林遣都だ。32歳にして、既に十分すぎるキャリアを築いている彼だが、ベキの回想シーンのみでの出演という贅沢なキャスティングによって登場する。
公安の任務ながら、表向きは農業使節団として、バルカに赴任。現地の人々とともに汗をかき、協力しながら、農地を開拓、「ノゴーン・ベキ(緑の魔術師)」の異名を取るまでに、尊敬の対象となる。その後、内戦の激化によって、救出されるはずが、公安トップの裏切りによって、結果、妻・明子(高梨臨)と一人息子である憂助を失う。
この出来事によって、一時は廃人同然となってしまうが、赤子であったノコルとの出会いによって、生きる希望を見出し、その戦闘技術を駆使して、自分を救ってくれたパトラカらとともにテントを旗揚げする。
本作は、考察合戦が過熱するあまり、こうしたサイドストーリーがあまり注目されなかった。しかしながら、ベキという“怪物”が、なぜ誕生するに至ったのかを説明する上で、このシーンを描くことは必須だった。そして、林の喜怒哀楽の表現力によって、ベキという人物の本質に近づくことができたのだ。