丁寧な脚本と関係性を見せる演技
第3話の脚本は『チャンネルはそのまま!』(2019、北海道テレビ)、『育休刑事』(2023、NHK)や映画『SAND LAND』(2023)の森ハヤシ、演出は『問題のあるレストラン』(2015)『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(2016、ともにフジテレビ系)など坂元裕二作品の演出でも知られ、近年は『イチケイのカラス』(2021~、フジテレビ系)、『金魚妻』(2022、Netflix)などを手掛けた並木道子。
森はオークラ同様、かつて芸人として活動していた脚本家だ。かもめんたるや小島よしおらの在籍していたコントグループWAGEの一員として学生時代から注目を集めていた。
死ぬ直前の万作が密室を作ったという3話のトリックや袖口の血という決定的証拠にやや苦し紛れ感は否めなかったけれど、その仕掛けを支えるのが万作の忠誠心、健一郎に対する思いであったところがよかった。トリックや証拠そのものではなく、親子二代にわたって仕える秘書と、その秘書に頼ってきた若き二世の関係に重きが置かれていた。
一度は陥落しそうになった健一郎が、万作が先回りして遺した言葉によって一旦うまく逃げられそうになるのも、その関係を象徴している。平田満の演技がこの展開を支えていたように思う。
今回初めて出てきた森野の「殺人事件みが強い」という表現は面白い。続けて「毒殺、絞殺、銃殺、刺殺の順に」となめらかに「事件みの強さ」の段階を語るシーンも、森野の性格が出ているようでよかった。
どこまでも冷静ながら、イップスに襲われるたび落ち込みがちな森野。かなり重大なイップスを抱えつつも明るく、小説の題材になりそうな事件には人目もはばからずはしゃぐミコ。モノマネで見られるような、ある意味「誇張した篠原涼子」のようなミコの演技は、この二人の対比をわかりやすく見せるこの作品にはちょうど合っているように思える。
細かなところだが、森野の「LUUP合わせの待ち合わせ」にはクスリとさせられたし、酒井(味方良介)による手づくり取材腕章はミコと森野の関係性を強化していくちょっとした支えになっていた。ミコが万作の妻に遺書を見せてもらえないか頼んだ際、すぐに見せるのではなく「弁護士に一度確認してみます」と返すところには、脚本の丁寧さが現れていた。