「画面から受ける印象を素直にトレースする」
普段とはちがうアフレコへの挑み方とは
―――まさに今回の作品も繊細なお芝居が見どころのひとつかと思いますが、ラミ・マレック演じるチャーリーの声をアフレコするにあたってどんなことを工夫されましたか?
「ぼくは最初に、どういうタイミングで喋っているか、どこで息継ぎをしているか、ここはこの辺で声を震わせて…というようなことを細かく見て、台本にいろいろと書き込んでおかないと不安になってしまうタイプなんです。でも、今回のラミ・マレックの場合は、わりと大づかみにというか、繊細な演技だからこそ、いま目の前で行われていることや彼の表情がどう動いたかということを、フレッシュに感じて声を当てるようにしました。台本に書き込んだものを表現する、というのは、ちょっと違う感じがしたんですね」
―――あらかじめ考えたものを持っていく、というよりは、そのときに中井さんが受けた感覚のほうを重視した感じなんですね。
「そうですね。1回見て思ったことと、もう1回見て思うことが違いそうだな、という気がしたので、画面から受ける印象を素直にトレースするような感覚でした。
今回の役柄って、全然特殊じゃないんですよね。ずば抜けているところはあるけれど、ものすごく悪いことを考えている人というわけではない。大事な人が亡くなってしまったということに対するチャーリーの感情は、ぼくらの生活の地続きにあるものだなと思ったので、がっつり作ってどうこうするというものでもないかな、と」