「吹き替えの台本って、無慈悲に『息』とかって書いてあるんです(笑)」
―――今までにラミ・マレックが演じてきた役のなかで、今回は特にここがすごかったな、と感じられたことがあれば教えてください。
「ぼくは声優なので、彼が言葉を喋って演技しているのであれば、それを日本語として表現することこそがぼくの仕事です。それがもう、今回は本当に…あ~、黙ってるよ、彼。黙ってて、ふっとため息をひとつついたよ…とか、そういうことの意味合いがすごく強かった気がするんです。
何かをじっと見つめているとかいうことにすごく大きな意味があって、そうすると手も足も出ないというか。吹き替えの台本って、そういうところに無慈悲に『息』とかって書いてあるんですよ(笑)。だからそれをどう表現していくかという、難しい作業でしたね」
―――その点において、『アマチュア』はスパイ映画というジャンルではあれど、今までにない作品に仕上がっていますね。
「設定からして、チャーリーは今まであまり主人公になり得なかった人ですよね。それに、予告編で明らかになっている状況を考えれば、どうしたって悲しくてハッピーエンドにはならないお話なのに、見終わったあとにはいい映画だな、という気持ちになれると思います」