坂東龍汰の熱演が心に沁みる…愛する人を忘れた先に見える希望とは? 映画『君の忘れ方』の真髄に迫る。評価&解説レビュー

text by ばやし

坂東龍汰が単独初主演を務める映画『君の忘れ方』が公開中だ。本作は、坂東演じる森下昴が西野七瀬演じる恋人の美紀を事故で亡くし、茫然自失の日々を過ごす中、ある不思議な体験を通して悲しみに向き合っていく物語。今回は、本作の魅力について深掘りし、レビューする。(文・ばやし)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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【著者プロフィール:ばやし】

ライター。1996年大阪府生まれ。関西学院大学社会学部を卒業後、食品メーカーに就職したことをきっかけに東京に上京。現在はライターとして、インタビュー記事やイベントレポートを執筆するなか、小説や音楽、映画などのエンタメコンテンツについて、主にカルチャーメディアを中心にコラム記事を寄稿。また、自身のnoteでは、好きなエンタメの感想やセルフライブレポートを公開している。

喪失からの再生をゆるやかに書きとめる物語

Ⓒ「君の忘れ方」製作委員会2024
Ⓒ「君の忘れ方」製作委員会2024

「グリーフ(grief)」という言葉を聞いたことがあるだろうか。

 大切なものとの別れによって心が不安定になってしまう状態を指す言葉で、日本語では「悲嘆」とも訳される。

 映画『君の忘れ方』は、そんなグリーフに苛まれる人々が、喪失による深い悲しみと現実を受け入れなければならないと思う葛藤の間で揺れ動きながら、少しづつ再生していく様子が描かれる作品だ。

 放送作家の森下昴(坂東龍汰)は結婚式を目前に控えていたなかで、妻の柏原美紀(西野七瀬)を交通事故で亡くしてしまう。彼女の死を実感できず悲嘆に暮れるなか、母親の洋子(南果歩)に促されて、実家のある岐阜へと帰省する。

 あまりにも唐突に失われた命。結婚式で使用するために作った画像フォルダからトリミングされた彼女の姿は、結婚したふたりを祝うビデオメッセージではなく、供花に囲まれた遺影として画面に映しだされる。

 映像では残酷なほど滑らかに切り替わっていて、昴が死を体感するよりずっと早く、周りの時間だけが流れていくさまが伝わってくる演出だった。

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