「涼しさを帯びていた」
本作の演技について
ーーー萩原さん演じる主人公・彼方と、藤堂さん演じる星野の2人が居酒屋で呑み交わすシーンがありましたが、お2人ともとても説得力のあるお芝居をされています。特に藤堂さんの受けのお芝居が素晴らしく、星野の感情がヒシヒシと伝わってきました。
「このシーンでは、とにかくセットにある食べ物を全部食べてくれって言われて(笑)。とんでもないオーダーをしてきたなって思いながら、めちゃくちゃ食ったんですよ。ずっと口に何かを含みながら喋っていたので、凄い制約を課されたなって思ってたんですけど、このシーンで初めて彼方が自分の気持ちを吐露するんですよね。意見あるんだコイツみたいな…。それを受けた瞬間、食べるという制約も忘れてしまうくらい止まってしまって、『あ、自分ちゃんと食らったな』と。そういう感覚になったのを覚えています」
ーーー終盤で星野が独白するシーンがありますが、10分間ほどの長回し・ワンカットで撮影されており、圧巻でした。
「あの時の記憶があまりなくて、匠海に肩を叩かれて『いいよ』と言われて、気付いたら終わっていました。現場の空気も静謐さがありましたね」
ーーーでは無我夢中でその10分間を駆け抜けたような感覚でしたか?
「あのシーンはかなり匠海自身が投影されていると思うんですよね。僕にも沢山引っかかるところがあって、熱いものはあったんですけど、無我夢中というよりかは、それこそ涼しさを帯びていた感じがします。あんまり考えてなかったんですけど、凄い冷静だったんですよ。心なのか頭なのか、熱すぎて記憶にはないんですけど、普通そのくらい感情が昂ってると手も震えたりするじゃないですか。でも手は震えることはなく冷静。一方でその時の記憶が飛んでいる。その感覚は新鮮でしたね。もう1回観たくなってきたな(笑)」