「観客のみなさんが幸福感のまま帰ってもらえるように」
音楽シーンの演出について

©池田理代子プロダクション/ベルサイユのばら製作委員会
©池田理代子プロダクション/ベルサイユのばら製作委員会

―――本作は、歌唱シーンが軸になっていますが、登場人物の歌は最初から入れる予定だったのですか?

「はい。以前やっていた『Dance with Devils』が、劇中に歌のシーンがある作品だったので、その延長線上であるのと、宝塚版もミュージカルなので『ベルばら』と歌の親和性が高いだろうと思っていたので、歌は最初から入れたいと思っていました」

―――本作には、音楽プロデューサーとして澤野弘之さんがご参加されています。音楽についてはどのような話し合いをされたのですか?

「今回、音楽を作るにあたって、いわゆるミュージカル風でも、アニメのキャラクターソング風でもなく、ポップス寄りの楽曲をお願いしました。ミュージカルのような演出に慣れていない方にも入りやすくしたいという考えです。映画でいうと『グレイテストショーマン』(2017)のような、聞きやすい楽曲にしたいとお伝えしました」

―――歌唱シーンの映像面での演出については、どんなところを意識されたのでしょうか?

「音楽面の演出でいうと、いわゆるテレビアニメのオープンエンドのような、本編ではできないような表現や色使いを目指しました」

―――監督ご自身、宝塚版への馴染みがあるように、『ベルばら』といえば宝塚版をイメージする方もいるかと思います。今回の劇場アニメにあたって、宝塚版を踏襲することは考えられたのですか?

「『ベルばら』は、テレビアニメはもちろん、宝塚だけでなく韓国でミュージカルにもなっていますし、過去には実写映画化もされていて、いわゆるマルチメディア展開されてきた作品です。本作も、原作を軸に劇場アニメとして自分たちの新しいコンテンツを生み出そうという意識で製作しています。

宝塚を特別意識しているわけではありませんが、唯一影響があるとすれば、オスカルが死んでからアンドレと出会うところ。宝塚では、オスカルが死んだ後、アンドレとペガサスに乗って飛び上がるという演出があります。今回の劇場アニメでは、オスカルが死に、その後のエンディングでアントワネットとルイ16世が処刑されて、そのまま終わるとお客さんが悲しい気持ちで沈んだまま帰ることになってしまうので、それは避けたかったんです。夢の中でアンドレと出会ってキスで終わりたいなと、みんなで話し合いました。宝塚では『ベルばら』に限らず、主演が死んでも最後にデュエットダンスで締める形式はよくあるので、お客さんが幸福感のまま帰ってもらえるように、という意味では通ずるものがありますし、影響は受けていると思います」

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