キャスティングに唸らせられた51分間
居酒屋の店主としてのスポット出演でありながら、さりげなくも確かな爪痕を残した井浦新も含めて、北村匠海監督のキャスティングに唸らせられた51分間だった。
エンディングでおもむろに流れる不可思議/wonderboyの「世界征服やめた」。その背景には、今までとさして変わらない朝の通勤風景が映し出されている。
「言っとくけどな。頭おかしいのは、当たり前の毎日を信じているお前みたいなやつのことだからな」と星野が居酒屋で向き合う彼方へ告げるように、明日も変わらない殺風景な日々が続くと決めつけているのは自分たちなのかもしれない。
作品を通して、目も当てられない傷がいくつもあった。それでも、傷だらけの映像のなかには光もあった。昇っていく朝日から、北村監督が確かな光を射してくれた。
彼らが今、生きて見ている世界はちゃんと動いている。この映画を見終えたあなたの世界はどうだろうか。何でもない日々は、動き出しただろうか。
ぜひ想いを言葉にして、教えてほしい。
(文・ばやし)