ほのぼの高齢者ドキュメント……かと思いきや
庭の草をむしり、お味噌汁を作り、集会所で歌を歌い、梨を剝く……そんな哲代さんののどかな一人暮らしが淡々と語られるの映画前半。ところが、哲代さんがある後悔について語り出す場面から映画のトーンが変わっていく。
①子どもができなかった後悔
哲代さんは人生を通して背負い続ける後悔がある。それは、今は亡き夫との間に子どもができなかったこと。本家の嫁でありながら子を残せなかった哲代さんは、そのことに負い目を感じ、自分を責めていた。繰り返し「すみません」と綴られた昔の日記が映される場面では胸が痛くなった。時代が変わって価値観が変化しても、出産が義務とされていた当時を過ごした哲代さんは、100歳を超えた今でもそのことを申し訳なく思っているようだ。