原作への深いリスペクトと柔軟な映像的アプローチ
―――原作を読まれてから、住野さんが描いた世界観を映像化するうえで、特に大切にされた点や意識されたことがあれば教えてください。
「特に意識したのは、やはり住野先生の想いやこだわりを、私なりにきちんと映像として形にすることでした。単に原作をそのまま映像化するのではなく、住野先生が原作で伝えようとしているメッセージやテーマをしっかり理解したうえで、『映像で表現するなら、こういうアプローチが良いのではないか』といった提案を、私からさせていただきました。
初めに、大まかなプロットをお渡しし、その段階で、オリジナルのシーンや創作要素が少し含まれていたので、そういった部分について、住野先生から細かくフィードバックをいただきました。
たとえば、『このキャラクターはこういう言い方はしない』とか、『この行動は違和感があるかも』といったキャラクター描写の部分や、『こんな表現はどうですか』といったセリフや演出に関するご提案もいただいて。私からの提案に対して、何度もラリーを重ねながら、細部まで詰めていくというやり方で進めていきました。そうしたコミュニケーションを重ねながら、作品全体の解像度を高めていったことが、今回もっとも力を注いだポイントだったと思います」
―――完成した本作をご覧になった、住野さんの反応はいかがでしたか。
「私自身、非常に緊張していたのですが、ありがたいことにとても気に入っていただけました。脚本の段階から『原作の理解度が高い』と感じてくださっていたようで、作品が完成した後にお会いした際には、『初稿の段階から原作の世界を深く理解していて感心しました』と言っていただけました。
完成した作品をご覧になったあと、特にキャスティングについてすごく喜んでくださって、住野先生が思い描いていた5人のキャラクター像と、今回のキャスト5人の雰囲気がぴったり一致していたそうなんです。それを聞いて、私としても本当に救われたような気持ちになりましたし、何より嬉しかったですね」