リアリティを生むカメラワーク
―――撮影は、『カランコエの花』や『少女たちは卒業しない』に続き、伊藤弘典さんが担当されています。本作でも、窓が多い教室ならではの自然光や、生徒たちの距離感を繊細にとらえた映像表現が特に印象に残っています。本作で3度目のタッグということで、お互いに信頼関係が気付かれていると推測しますが、今回の画作りにおいて、中川監督から伊藤さんに何か具体的なリクエストやディスカッションはあったのでしょうか?
「『カランコエの花』の頃からずっと、伊藤さんにカメラをお願いしていますが、今回改めて、特別なリクエストをしたということはなくて。当時から一貫してお伝えしているのは、『リアリティのある映像を撮りたい』ということです。作り込まれた世界観ではなく、その場に居合わせたかのような、ドキュメンタリーに近い質感を目指したいとお願いしてきました」
―――『カランコエの花』や『少女たちは卒業しない』でも、あえてカメラに揺れをつける手持ちカメラを利用した演出が見られましたが、本作ではその手法がさらに多く取り入れられていて、まさにドキュメンタリー作品を観ているような臨場感がありました。
「そうですね。カメラのブレを活かし、カットを割ってのカットバックではなく、1台のカメラで振りながらその場に居合わせたように会話を追うカメラワークでリアリティを表現する――そうした手法は、伊藤さんとこれまで一緒に築き上げてきたスタイルです。今回の撮影でもそのアプローチをさらに追求しました。
また今回は、新たな挑戦としてフレームサイズにも変化を加えました。『カランコエの花』や『少女は卒業しない』ではシネマスコープサイズで撮影してきましたが、このサイズだと今回の作品の性質上、画面に収まりにくいという課題があったんです。そこで今回は、ヨーロピアンビスタという、16:9よりも少し横幅の狭いサイズにトライしました。これは伊藤さんと私にとっても、新しい挑戦となりました」
(取材・文:タナカシカ)
【作品詳細】
映画『か「」く「」し「」ご「」と「』
公開日:2025年5月30日(金)
出演:奥平大兼、出口夏希、佐野晶哉、菊池日菜子、早瀬憩
監督・脚本:中川駿
原作:住野よる『か「」く「」し「」ご「」と「』(新潮文庫刊)
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【了】