東出昌大の一人二役は吉と出たのか凶と出たのか~配役の寸評~
主役の朝子を演じたのは、撮影当時18歳の唐田えりか。影のある佇まいで、悩める主人公を好演してはいるものの、実年齢と役年齢に開きがあり、観る人によっては「若すぎるのではないか?」と違和感を抱くかもしれない。
麦と亮平の二役を演じた東出昌大は、元々機微に富んだ芝居を得意とするタイプではないため、フラットな芝居を要求する濱口演出との相性は良好である。とはいえ、現れた途端に朝子のハートを奪い、気まぐれに姿を消す麦の存在は、どこか異星人めいている。有名ファッションモデルであり、人目を惹くルックスの東出と言えども、現実離れした麦というキャラクターに血を通わせることはできておらず、やや空疎な印象を与える。
主役2人のパフォーマンスが盤石ではない分、脇を固めるキャストの充実っぷりに目が行く。朝子の大阪時代の友人・春代は伊藤沙莉が扮し、大阪弁で、のべつ幕なしに喋り倒すコメディリリーフを好演。また、マヤ演じる山下リオ、亮平の友人・耕介に扮した瀬戸康史の芝居も見応え抜群。両者が激しく対立し、亮平と朝子を巻き込んだ激しい口論を展開するシーンは、ドキュメンタリーのような生々しさがあり、サブエピソードではあるものの、山下、瀬戸の迫真の演技によって強烈なインパクトを残す。