tofubeatsが担当した音楽の魅力
劇伴を担当したのは、音楽プロデューサーのtofubeats。リズミカルなダンスミュージックを多く手掛けるアーティストではあるが、本作ではアップテンポの曲は少なく、抑えたトーンの楽曲が大半を占めている。
一般的には、登場人物の感情を強調したり、シーンの意味を明確にするのが、映画音楽の役割である。しかし、本作では亮平のもとに戻った朝子が彼と口論するシーンを始め、登場人物の感情が高ぶるシーンではなく、朝子と友人が公園で会話をする場面など、平坦なシーンに音楽が使用されている。
それによって、登場人物が心の内をあらわにする場面であっても、シーンの解釈を狭めることなく、キャラクターの心情を自由に想像する余地が生まれるのだ。本作の音楽は、映像表現と同じく、劇的な効果や実験性があるわけではないが、ポジティブな意味で曖昧な作品世界をさりげなく彩っているのだ。
《主な使用楽曲》
tofubeats『RIVER』