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豪華キャスト陣の気迫の演技に胸打たれる
加害者役の松浦りょうの眼差しに注目

©2022 December Production Committee All rights reserved

怒りと憎悪の呪縛に囚われた主人公の克を演じるのは、フィリピンの巨匠ブリランテ・メンドーサと組んだ主演作『義足のボクサー GENSAN PUNCH』(2021年)で主役を演じた尚玄。

元妻の澄子役には、数々のドラマに出演するほか、第62回ブルーリボン賞助演女優賞を受賞した『台風家族』、『ひとよ』(ともに2019年)などで多彩なキャラクターを演じてきたMEGUMI。深い喪失感を共有しながら、対照的なベクトルで裁判の成り行きを見つめる元夫婦の複雑な思いを表現している。

加えて、澄子の現在の夫役にオリエンタルラジオの藤森慎吾、裁判長役で真矢ミキが脇を固めている。

それでも、この作品の見どころは、加害者・夏奈役の松浦りょうの演技に尽きるだろう。『眠る虫』(2020年)では、主役として、盗聴癖のある謎の多い難役を演じ切った。本作でもその芝居の引き出しの多さが、いかんなく発揮されている。殺人罪によって収監され、弁護士との接見においても、裁判所での証言台に立った際においても、表情や顔色ひとつ変えることなく、その声音によって感情を見事に表現。殺人を犯した女囚を不気味なまでに自然に演じているのだ。

つかみどころのない加害者・夏奈の内面と、未成年犯罪を罰することの難しさ、そして『赦し』というタイトルが、観る者の頭の中で繋がっていく展開には思わず息を呑む。答えのない問いに真摯に向き合った力作だ。

(文・寺島武志)

映画『赦し』は3月18日よりユーロスペースほか全国順次公開

【作品情報】
【監督・編集】アンシュル・チョウハン
【出演】尚玄 MEGUMI 松浦りょう 生津徹 成海花音 藤森慎吾 真矢ミキ
【プロデューサー】山下貴裕 茂木美那 アンシュル・チョウハン
【エグゼクティブ・プロデューサー】サイモン・クロウ ランカスター文江
【アソシエイト・プロデューサー】前田けゑ 澤繁実 岡田真一 木川良弘
【脚本】ランド・コルター
【撮影】ピーター・モエン・ジェンセン
【音楽】香田悠真
【助成】文化庁
【製作プロダクション】KOWATANDA FILMS、YAMAN FILMS
【配給】彩プロ
2022 年/日本/日本語/カラー/2:1/5.1ch/98 分/
原題(英語題):DECEMBER
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映倫:G 区分
公式サイト

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