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役者の実人生と映画の物語がリンク
主人公の生き様を通じて生きることの尊さを学ぶ

C2022オフィスクレッシェンド

広志役の奥野瑛太は、1986年生まれ。入江悠監督作品『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(2012)で主演を務めて以降、数多くの映画やテレビドラマに出演を果たすも、大役に恵まれる機会はそう多くない。一方、ヒロインを演じる唐田えりかは、濱口竜介監督の商業映画第一作『寝ても覚めても』のヒロインを好演し、若手のホープとして脚光を浴びるも、同作で共演した俳優との不倫スキャンダルで活動自粛を余儀なくされた。

そんな2人が売れない役者とデリヘル嬢を演じているのだから、彼らの実人生と映画の物語を重ねずにいることは難しいだろう。広志の両親役にも、きたろうと烏丸せつこを配するなど、脇をキッチリと固めており、コミカルでありながら、心に沁みる人間ドラマを見せてくれている。

草苅勲監督は、個性的なキャラクター設定と、彼らが巻き起こすエピソードを小気味よく散りばめた作風で知られる。本作においても、自身の俳優経験を落とし込み、普段は光の当たらない場所に光を当て、さらに深掘りした作品に仕上げている。

『死体の人』という作品名だけ聞くと、“B級感”が頭をよぎるが、本作は、映画・ドラマに携わる俳優・スタッフに対するリスペクトの念はもちろん、加えて、鑑賞者に対しても、「生きるとは何か」そして「死ぬとは何か」という、答えの見つからない根源的な問いを投げかける。

この世には、死んだように生きている人がごまんといる。しかしながら、日々「死」と向かい合いながら、不器用な生き方を通して理想と現実の折り合いをつけることの難しさに直面し、もがき続けながらも、「生」の意味を探し続ける広志の姿には、生きることの尊さを感じずにはいられないのだ。

(文・寺島武志)

3月17日渋谷シネクイント 他順次全国公開

【作品情報】
監督:草苅勲
脚本:草苅勲 渋谷悠
製作:長坂信人
エグゼクティブプロデューサー:神康幸
プロデューサー:利光佐和子
撮影:勝亦祐嗣
照明:高橋拓
録音:百瀬賢一
装飾:松田英介
スタイリスト:三浦玄
ヘアメイク:平林純子
編集:草苅勲 伊藤潤一
ミックス:紫藤佑弥
音楽プロデューサー:小野川浩幸
音楽:沼口健二 足立知謙
主題歌:THEイナズマ戦隊
助監督:東條政利
出演:奥野瑛太、唐田えりか、楽駆、田村健太郎、岩瀬亮
公式サイト

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