映画『赦し』初日舞台挨拶、尚玄・松浦りょう・藤森慎吾・監督が登壇! 藤森慎吾の「赦してほしいこと」とは?
娘を殺された元夫婦と、犯行時に未成年だった加害者の女性を“魂の救済”と“赦し”という深遠なテーマで真っ向から挑んだ問題作『赦し』が3月18日から公開された。初日舞台挨拶が渋谷・ユーロスペースにて行われ、アンシュル・チョウ監督や出演した尚玄、松浦りょう、藤森慎吾が登壇した。
人間は犯した罪からもう一度生き直せるのか─?
魂の救いを正面から描く
日本在住の気鋭のインド人監督アンシュル・チョウハンの最新作。法廷の内外での激しくも揺らめく感情を体現した尚玄×MEGUMI×松浦りょうの迫真のアンサンブル怒りと憎悪の呪縛に囚われた主人公、克を演じるのは、フィリピンの巨匠ブリランテ・メンドーサと組んだ主演作『義足のボクサー GENSAN PUNCH』が記憶に新しい尚玄。元妻の澄子に扮するのは、第62回ブルーリボン賞助演女優賞を受賞したMEGUMI。さらに、澄子の現在の夫を演じるオリエンタルラジオの藤森慎吾、裁判長役を毅然と体現した真矢ミキがドラマに厚みを与える。
そして、夏奈役に抜擢された松浦りょうのキャスティングも見逃せない。映画デビュー作「渇き。」など独特の存在感を示してきた新進女優が、本作における最大の発見としてあらゆる観客を驚嘆させるだろう。
初日舞台挨拶
尚玄、松浦りょう、藤森慎吾、監督が登壇
映画「赦し」初日舞台挨拶が18日、東京・渋谷のユーロスペースで行われ、主演の尚玄、共演の松浦りょう、藤森慎吾(オリエンタルラジオ)、メガホンをとったアンシュル・チョウハン監督が登壇した。
本作は、娘を殺された元夫婦と犯行時に未成年だった加害者の女性という、癒やしようのない苦しみに囚われた3人の葛藤を見据え、魂の救済、赦し(ゆるし)という深遠なテーマに真っ向から挑んだ問題作。娘をクラスメイトに殺害され、怒りと憎悪の呪縛に囚われた主人公・樋口克を尚玄が、克の元妻・岡崎澄子を MEGUMI が、克と澄子の娘を殺害した加害者・福田夏奈を松浦が、澄子の現在の夫・岡崎直樹を藤森が演じる。
本作を見終えた満員の観客を前に尚玄は「上映後はみなさんの溢れてくる感情がどんどん伝わってくるので、もらってしまいますね。鳥肌が立っています」と感無量な表情を浮かべ、同役は肉体的にも精神的にも過酷だったそうで「監督はまず最初に僕の写真にフォトショップでヒゲを生やし、そして『太ってくれ』と言われたので大変でした。」と明かし、「ただ肉体的なことよりも自分の娘を殺された父親ということで、クランクイン前からずっとその感覚を作って、積み重ねてきて、最後の彼女(松浦)との対峙シーンまで、(松浦とは)ひと言も喋らず、あのシーンのためにずっと積み重ねてきたのでつらい現場でしたけど、こういう役をいただけてアンシュル監督には感謝しています」としみじみと語った。
また、加害者という難役に挑んだ松浦は、撮影中の心境を尋ねられると「常に楽屋も別で孤独な環境を作っていただいたので、それはすごくやりやすかったんですけど、尚玄さんにお会いするたびに挨拶をしても『・・・』だったので、“何かしちゃったかな…”って思ったんですけど(笑)、撮影が終わったあとにハグをしてくれて『ごめんね』って言ってくれたので、それで胸がいっぱいになりました」と回顧した。
そんな2人は、対峙するシーンを撮影した際、どのような気持ちでいたのかと聞かれると、尚玄は「僕は自分を思いとどまらせることができなければ、(松浦を)やってしまうくらいの気持ちで臨んでいたんですけど、彼女の目の奥にある種の諦念みたいなものもありましたし、だけど未来に対して『自分がここにいるよりも、外に出ることでできることがあるんじゃないか』という言葉が伝わってきましたね」と語り、松浦は「1番思い出深いシーンなんですけど、監督から『申し訳ないという姿勢じゃなくて、すごく強くあってほしい』と事前に言っていただいていたので、すごくつらいシーンでしたけど演じやすかったですね」と明かした。
そして藤森は、MEGUMIの紹介で同役に決まったそうで「それからアンシュル監督とお会いして、そこで『自分の思う風でいいので夫婦を演じてください』と言われたんですけど、めちゃくちゃ難しかったですね。どんなバラエティの無茶振りより難しかったです」と吐露して笑いを誘い、「映像の作品でそういうアプローチをした経験がなかったので、最初はすごく緊張したんですけど、監督が『もう1回、もう1回!』って繰り返してやっていくうちに、MEGUMIさんともし夫婦だったらこういう生活をしているのかなって背景が見えてきて、僕にとっても新しい経験をさせてもらえた現場でしたし、監督の作る世界観に溶け込みたいなという思いで作品に臨めたのですごくよかったです」と感慨深げに語った。
そんな藤森と一緒に仕事をすることが楽しかったというアンシュル監督は「もともとこの映画を作る際に芸人さんをキャスティングしたいと思っていました。最初に藤森さんが撮影に入ったシーンが克の家に来るシーンで、すごく難しいシーンを1テイク長回しで撮影させていただいたんですけど、藤森さんがすごく役のことを理解されていたので、こちらから何かをお伝えしなくてもスムーズに撮影できたかなと思います」と褒めると、藤森は「おー!素直に嬉しいですね」とにっこり。続けて、役作りで意識したことを聞かれた藤森は「尚玄さんのいる現場には差し入れを入れないってことですね」と告白して笑わせ、「真剣にそれが僕的にもよくて、きっと尚玄さんが導いて作ってくれた空気だと思うんですけど、初の体験でしたね」と語った。
なお、本作の公開日前日となる3月17日に40歳の誕生日を迎えた藤森は、監督キャストを代表して松浦から花束を受け取り、観客から祝福の拍手を浴び「ありがとうございます!1番のプレゼントです。公開が誕生日翌日ということがタイミング的にすごく嬉しいです。より多くの人に見ていただけたらなと思っております。40歳になりました!」と感謝し、40歳の抱負を尋ねられると「まだ独身で自由な時間が多いんですけど、あまりにも自由なのでちょっとサウナの回数を減らそうかなと思っています。暇があればサウナに行っちゃうので、もうちょっと違うことに(時間を)充てられるんじゃないかなという気持ちです」と吐露。
そして、本作のタイトルにちなんで、“これまでの人生の中で赦してほしいこと”を聞かれた藤森は「えっ…。現場でも散々無茶振りがあったんですよ…」と苦笑しつつ、「反省だらけですけど、今40になって自由にやらせていただいているということは、どこかで一緒になるタイミングとかがあったのかも知れませんけど、そうならなかったすべての女性に赦しを請いたいです」とコメントして会場を沸かせ、松浦も「最高です!」と喜び、終始温かい空気に包まれた舞台挨拶は幕を閉じた。
【作品情報】
監督・編集:アンシュル・チョウハン(『コントラ KONTORA』 撮影:ピーター・モエン・ジェンセン 音楽:香田悠真
出演:尚玄 MEGUMI 松浦りょう 生津徹 藤森慎吾 真矢ミキ
プロデューサー:山下貴裕 茂木美那 アンシュル・チョウハン/エグゼクティブ・プロデューサー:サイモン・クロウ
ランカスター文江/アソシエイト・プロデューサー:前田けゑ 澤繁実 岡田真一 木川良弘/脚本:ランド・コルター
助成:文化庁 製作プロダクション:KOWATANDA FILMS、YAMAN FILMS 配給:彩プロ
2022 年/日本/日本語/カラー/2:1/5.1ch/98 分/原題(英語題):DECEMBER
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