観る者の死生観にタッチする
メガホンを取ったのは、『夜間もやってる保育園』(2017年)や、『ただいま それぞれの居場所』(2010年)、『9月11日』(2010年)などといった社会派ドキュメンタリーを数多く制作している大宮浩一。
彼女の素顔と、周辺の人々の証言を中心にストーリーが構成されている。しかしながら、そこに政治的主張や不満は存在しない。ただ目の前にある現実を映し出している。
本作を観て、「若い女性の可哀想な物語」と感じる方もいるだろう。もちろん、感想は人それぞれであり、決して否定するつもりはない。しかし、ゆずなさんの姿は、「その先にあるもの」を提示しているような気がしてならない。
生きている以上、「死」というものは避けがたい現実であり、病魔というものは、いつ襲ってくるかも分からないものだ。これは、一人の女性の闘病記ではなく、観る人にとっては、自分自身の物語でもあるのだ。
【作品情報】
『ケアを紡いで』
出演:鈴木ゆずな、鈴木翔太、
西川彩花、沼里春花、野村将和、谷口眞知子、「地域で共に生きるナノ」の皆さん
監督:大宮浩一|企画:鈴木ゆずな|制作:片野仁志、大宮浩一|撮影:田中圭
編集:遠山慎二|整音:石垣哲|エンディング曲:「HOME」古見健二
配給:東風|製作:大宮映像製作所
2022年|89分|日本|ドキュメンタリー
2023年4月1日(土)より[東京]ポレポレ東中野、4月8日(土)より[大阪]第七藝術劇場、4月14日(金)より[京都]京都シネマ、ほか全国順次公開