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みうらじゅん原作・かつての童貞に捧ぐ映画

田口トモロヲ『色即ぜねれいしょん』(2009年)


出典:Amazon

監督:田口トモロヲ
脚本:向井康介
原作:みうらじゅん
出演:渡辺大知(黒猫チェルシー)、峯田和伸(銀杏BOYZ)、岸田繁(くるり)、堀ちえみ、リリー・フランキー、臼田あさ美、石橋杏奈

【作品内容】

乾純はボブ・ディランに憧れる高校生。ロックな生き方に憧れるも、何不自由ない平凡な生活がコンプレックスだった。ところがある日、友人にフリーセックスの島に行かないかと誘われるのだが…。

【注目ポイント】

みうらじゅん
原作のみうらじゅんGetty Images

俳優、ナレーター、ミュージシャンなど、幅広いジャンルで活躍する田口トモロヲが手がけた2本目の監督作品。本作はみうらじゅんの自伝的小説が原作になっている。ちなみに、初監督作品もみうらじゅんの漫画『アイデン&ティティ』が原作である。

「青春は、モヤモヤするほど、ドキドキする。」をキャッチコピーに掲げ、文字通り、悶々とした学生生活を送ってきた人にぶっ刺さる映画になっている。選ばれたわずかな人間が体験したであろう、キラキラした少女漫画のような青春ではなく、童貞たちの悶々とした青春を描いているため、むず痒いような、でも大人になってから振り返ると恋しくも感じるあの時間が詰まっている。

自身の高校時代を振り返ってみると、覚えがないだろうか。何者かになりたくて、なれなくて、自分の中だけでどんどんどんどん欲望が高まるあの感覚。この映画は、思い返すと宝物のようだった青春時代にしか味わえない”あの時間”を追体験することができる。

主役を演じた、ロックバンド黒猫チェルシーのリードボーカル・渡辺大知をはじめ、銀杏BOYZの峯田和伸、くるりの岸田繁など、本物のミュージシャンが多数出演しているのにも注目。劇中のライブシーンは臨場感あふれる名場面となっており、演奏シーンを観るだけでも十分に楽しめる。

ちなみに渡辺は、当時、芝居未経験でありながら、オーディション総数2000人の中から見事主演に抜擢された。加えて、当時は本当に童貞だったとのこと。冴えない高校生のリアルな感情をナチュラルに表現し、観る者の心に残る芝居をこなしてみせた。本作が魅力的になったのは、渡辺のフレッシュで切実な演技もさることながら、彼を主演にコンバートした田口の”ホンモノ志向”が功を奏した結果だろう。

田口トモロヲは、 NHK『プロジェクトX~挑戦者たち~』のナレーションのイメージが強いが、実は漫画家出身であることをご存じだろうか? さらに、彼は同時に、演劇やバンドなどの活動も並行して行っていた。

芝居だけではなく、様々なカルチャーに触れた経験が、”総合芸術”である映画づくりの役に立たなかったわけがない。田口の多岐にわたる活動と豊かな人生経験が、見事に結実した一作と言えるだろう。

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