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庵野秀明はなぜキレた…? 『シン・仮面ライダー』深掘りレビュー。賛否両論のドキュメンタリーから紐解く問題点とは?

text by 柴田悠

Amazonプライムで配信がスタートした映画『シン・仮面ライダー』。庵野秀明に密着したNHK制作のドキュメンタリーでは、スタッフ陣との衝突が赤裸々に放送され、賛否を呼んだ。公開時「がっかりした」という声も多く聞かれた本作。今回は、ドキュメンタリーの内容を踏まえ、庵野秀明が描きたかったことを深掘り考察する。(文・柴田悠)

ライダーキックと爆発頼み…。
完成度よりも野蛮な熱量を優先した演出

監督を務めた庵野秀明Getty Images

「シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース(S.J.H.U)」と題し、過去の邦画の名作に新たな解釈を加え、再構築してきた庵野秀明。そんな彼が新たにメスを入れるのは、昭和・令和の子どもたちを虜にしてきた変身ヒーローものの金字塔・仮面ライダーである。とはいえ、筆者の感想としては、2016年公開の『シン・ゴジラ』や2022年公開の『シン・ウルトラマン』ほど万人受けの作品とは言い難く、むしろ観客を選ぶ作品になっていると感じた。

例えば、作中ではショッカーたちと本郷猛たちとの戦闘や説明に重きが置かれ、心理描写やドラマ性は希薄。また、スピード感と迫力が売りの戦闘シーンもいささかチープなCGが多めで、ライダーキックと爆発頼みという感も否めない。なぜこのような演出が施されているのか。

行き当たりばったりのドラマと見せ場だけで繋いだような展開、そして怪人たちのグロテスクな造形…。昭和世代であればきっと、仮面ライダーのそうした側面に思い当たることだろう。今なら、「雑」の一言で片づけられてしまいそうだが、そこには何が起こるか分からないカオスな豊かさにあふれていた。決してウェルメイドではない野放図な熱量。それこそが仮面ライダーの魅力だったのである。

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