日常からかけ離れた場所で撮りたかった
かつての流刑の地・佐渡島をロケ地に
―――“肉”というモチーフに関しては後ほど詳しく伺うとして、まずは神様を主人公に据えたことについて。3人の会話がとてもユニークに描かれていますね。
「メインキャストの3人はそれぞれ性格も役者としてのタイプも異なります。脚本を執筆する際は、3人それぞれの人間としての面白さを引き出すことを意識しました」
―――3人が作り出すくつろいだ空気感が心地良かったです。個人的には、コロナ禍で右往左往する人々を、3人の神様が天から見守りつつ憂いでいる様子を描いているようにも見えました。
「確かに!言われてみたらそういう見方もできますね。役者陣には『人間くさい神』という言葉で、キャラクターのイメージを伝えていました。設定は突飛ではあるのですが、ファンタジーというよりかは、普通の世界として描きたかったんです。
随所で特殊な言葉も出てきますが、かしこまった風にではなく、日常会話のように話してほしい、ということは伝えました」
―――なるほど。日常的な会話が心地良いリズムを生む一方、水鏡に映る偉い神様(六平直政)と会話をするシーンでは、アッと驚くような映像が見られます。このシーンはどのようにして撮られたのでしょうか?
「このシーンは撮影のJUNPEI SUZUKIさんのアイデアによるものです。初めは、水面の映像に六平さんの映像を合成しようと思っていたのですが、合成で使うための“アタリ”を撮るために、東京で別撮りした六平さんの映像を水面に投影したら、あのような映像になりました。『これ、そのまま使えるかも!』と、撮影する側も驚くようなカットになりました」
―――合成にしては水面の揺れがあまりにも自然だったので不思議に思っていたのですが、非常にシンプルな方法で撮られていたのですね。
「合成で水面の揺れをリアルに再現するとなると、大変なコストがかかりますからね。ちなみに、水面の揺れに関しても、水瓶を揺らす、あるいは、水滴を落とす、といった方法で複数のパターンを人力で作り出しています」
―――古代遺跡を想起させる巨大な石造物、広大な海に面した崖など、ロケ撮影も充実しています。新潟県の佐渡島をロケ地に選ばれた理由を教えてください。
「時代も国籍もハッキリしない、日常からかけ離れた場所で撮りたかったのです。とはいえ、そんな空間、簡単には見つからない。そんな中、主演の一人であり、プロデューサーも務めてくれている大山真絵子さんが新潟出身ということもあり、佐渡島を勧めてくれたんです。それから佐渡島について調べれば調べるほど、ロケーションの美しさに惹かれていきました。
また、かつては流刑の地であった佐渡島の歴史的な背景にも興味をかき立てられました。本土から追放された人々と、祭りを目前に控えて葛藤する神たちの姿には親和性があるなと思って。あらゆる点で、ピッタリなロケ地に巡り合えたと思っています。ちなみに、指摘された古代遺跡のような場所は、元々は金鉱山だった場所です」