CURE 配役の魅力
役所広司は、刑事から犯罪者まで幅広い役柄をこなす名優だが、生まれ持った実直な佇まいが魅力である。その点、真面目すぎるあまり多大なストレスを抱え、徐々に解放へと導かれていく高部刑事役はハマり役という他ない。
高部に対峙する間宮を演じるのは、萩原聖人。全身の筋肉を強ばらせ、神経質な芝居に徹する役所広司とは対照的な脱力演技を披露し、歪な世界観を決定づけている。
萩原の芝居の見どころは、セリフの抑揚や表情の変化のみならず、歩行姿勢や座り方など、ディテールにまで及ぶ。初登場シーンから一貫して足を引きずるような歩き方をみせ、不穏な雰囲気を体現。また、終始ゆったりとした身のこなしで、対峙する人物の警戒を解いていくサマがなんとも悪魔的だ。
高部の友人であり、精神科医の佐久間を演じるのはうじきつよし。催眠術によって、精神が崩壊する瞬間は大きな見せ場となっている。女医役の洞口依子、警官役のでんでんは、間宮に洗脳されて殺人に手を染める役を好演し、出番は短いながらも、観る者に鮮烈な印象を残す。