CURE 映像の魅力
日活出身のカメラマン・喜久村徳章による、恐怖映画らしい陰影に富んだ映像が印象的である。喜久村は後に、大ヒットホラー映画『呪怨』(2003)の撮影監督に起用されており、本作の映像が国内のホラー映画作家に与えた影響は極めて大きい。
基本的な撮影スタイルは、長回しのワンシーンワンカットである。人物の動きに合わせてカメラを移動させ、端正な構図を維持する技術は驚嘆すべきレベルだ。
また、所々に登場する車内の移動シーンは、背景に雲の映像が合成されており、現実感が薄い。移動シーンを浮遊感のある映像で描写することで、意思を超えた力に促され狂気へと突き進む高部の心境が、そこはかとなく暗示されているのだ。
ラストカットも優れて技巧的である。ファミレスでタバコをくゆらせる高部の顔を映した映像は、徐々に背景のウェイトレスに焦点を合わせ、彼女が刃物を手にするまでを一息に見せ切る。
カメラはウェイトレスに寄りすぎることはなく、終始一定の距離を保っており、客観視点ならではのリアルな映像がジワジワと恐怖を呼び起こす。本作には派手さはないが、創意に富んだカットが豊富にあり、観る者の想像力を刺激して止まない。