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予想を裏切る展開…。齋藤飛鳥の演技の評価は…? 映画『サイドバイサイド 隣にいる人』は面白い? 忖度なしガチレビュー

text by 柴田悠

『世界の中心で愛を叫ぶ』の脚本家・伊藤ちひろが監督を務めたマジックリアリズム映画『サイドバイサイド 隣にいる人』が4月14日から公開中だ。今回は、主演の坂口健太郎や元乃木坂46の齋藤飛鳥らキャストの演技評価も含めた、本作のレビューをお届けする。(文・柴田悠)【あらすじ キャスト 考察 解説 評価】

メガホンをとったのは『世界の中心で愛を叫ぶ』の脚本家
日本では珍しいマジックリアリズム映画

主演を務めた坂口健太郎Getty Images

本作は、3月に『ひとりぼっちじゃない』で監督デビューを果たした伊藤ちひろ監督によるオリジナル映画第2弾。『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)や『劇場』(2020年)で知られる監督・行定勲がプロデュース・企画を担当し、坂口健太郎や元乃木坂46の齋藤飛鳥、市川実日子らがキャストに名を連ねている。

さて、当代きってのイケメン俳優・坂口健太郎と元アイドルの気鋭女優・齋藤飛鳥が出演し、『世界の中心で愛をさけぶ』の脚本を担当した伊藤ちひろがメガホンを取ったとなると、一体どんな恋愛映画に仕上がっているのかという向きもあるかもしれない。かくいう私も、恋愛映画のクチにしてから映画館へと足を運んだ。

しかし、物語の開始早々、この予想は大きく裏切られることになる。

…これは、アピチャッポンではないか!

アピチャッポンとは、映画監督アピチャッポン・ウィーラセタクンのこと。出身地であるタイの東北地方を舞台とした伝説や民話を散りばめた幽玄で抒情的な作風で知られる作家で、『ブンミおじさんの森』(2010年)がカンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞し、世界的な評価を受けている。

そんな彼の作品は「マジックリアリズム」というワードで語られることが多い。マジック・リアリズムとは、動物や死者、登場人物の前世など、ファンタジックな存在が現実に登場する作品のこと。国内の作品では清原惟の『わたしたちの家』(2017年)や甫木元空の『はだかのゆめ』(2022年)などが制作されているが、どの作品もミニシアター系の作品ばかりで、今回のようにシネコンでの上映を年頭に置いた作品はほとんどなかったはずだ。

では、なぜマジックリアリズムの作品は、シネコンで上映しづらいのか。それはひとえに、マジックリアリズムの作品が死生観をテーマとした作品が多く、哲学的で小難しいことが挙げられるだろう。そんな流れを汲んだ本作も、決して一筋縄で行く作品ではないが、他の映画にはない魅力が詰まっている。次章からは、本作の魅力をたっぷりと紹介しよう。

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