「重要なのは振り付けに見せないこと」
キャラクターの個性と一体化したアクションを求めて
―――アクションを演出する上で大切にされていることを教えてください。
「アクションを演出する上で最も重要なのは、とにかく振り付けに見せないようにすることです。そのためには、アクションの生々しい部分をそぎ落とさないようにしなければならないし、動きから戦う意志が見えてこなければいけません。
アクションを演出していて上手くいかない時って、大抵、役者さんが振り付けを覚えることに一杯いっぱいになっている。通常のお芝居に例えると、脚本に書かれたセリフを噛まずに最後まで言い切ったからといって、必ずしも良いお芝居にならないのと同じで、振り付けを間違えずに行うこと=良いアクション、というわけではないのです」
―――血の通ったアクションを構築するために重要なポイントは何でしょうか?
「アクションからキャラクターが見えてくるかどうかが重要です。
通常の芝居でも、セリフの言い回しや行間の作り方が重要になってくるように、キャラクター特有のアクションを作り出すために、役者さんからアイデアをいただくこともあるし、僕からアイデアを投げかけることもあります。
役者さんの考えを尊重しつつ、自分の頭の中には、今までの経験で蓄積してきたアクションのパターンが無数にあるので、『こういう動きをすればこのキャラクターっぽいアクションになりますよ』と提案して、キャラクターのイメージから逸脱しない動きを一緒に作り上げていくのです」
―――良いアクションを作り上げるためにはキャラクター表現とセットで考える必要があるのですね。
「人間一人ひとり、みんながみんな同じ動きをすることなんてあり得ないじゃないですか。例えば、格闘ゲームで空手をバックボーンとするキャラクターが3人いたとして、それぞれが同じ動きだと面白くありませんよね。必殺技や、動きのクセが異なるからこそ、プレイヤーは『このキャラクターが好き』という感情が芽生えると思うんです」