シリアスな場面とコミカルな場面を描き分ける
荻上直子の手腕に注目
何もかもが思い通りにいかずに追い詰められる依子の心に「波紋」が広がっていく。
パートごとに雫が水面に落ち、波紋が広がる美しい映像が挿入される。しかし、依子の心は乱れていく一方だ。そして、緑命会への信仰はますます深みにハマっていく。
本作に登場する新興宗教「緑命会」の活動は、笑ってしまうほどベタな“インチキ宗教”そのものだ。しかし、最近では社会派作品を多く手掛ける荻上直子監督は、そうした新興宗教の存在や活動を“絶対悪”としては描いてはいない。
修の父の遺産を食い尽くされ、息子には距離を置かれる原因となったにもかかわらずだ。
依子は実際、緑命会との関わりによって心の平安を得ており、宗教が彼女の拠り所となっているのは紛れもない事実である。
脚本も兼ねた荻上監督は、その様子を、時にコミカルに表現し、笑いに変えてもいる。そして、新興宗教の存在の是非は鑑賞者に委ねている。