宮崎映画の原点ー演出の魅力
本作は、『ルパン3世 カリオストロの城』(1979年)に続く宮崎駿監督作品第2弾。1984年の公開当時は数々の賞を受賞し、宮崎駿の名を一気に世界に知らしめた。また、2019年には歌舞伎として上映されるなど、公開から40年を経た今もなお名作として愛され続けている。
原作は、徳間書店のアニメ情報誌『アニメージュ』に1982年から1995年にかけて掲載された同名漫画で、本作で映像化されているのは全7巻のうちの2巻目まで。つまり、本作の物語は厳密には完結しておらず、宮崎自身、本作を「不完全な作品」としてあまり良い評価を下していない。では、なぜ本作は「不完全」なのか。それは、以下のようないきさつがある。
当時、『アニメージュ』の編集者だった鈴木敏夫は、社内の映画企画委員会に宮崎の企画を打診したが、反応があまり芳しくなかったとのこと。そこで鈴木は、原作漫画をヒットさせ、映画化にこぎつけるという戦略を考えた。しかし、この件を宮崎に伝えると、「映画化を前提に漫画をヒットさせるのは不純」として、漫画を独立した作品として完結させることを条件に引き受けたという。
しかし、本作が「不完全」だからといって、本作のクオリティが劣っているわけでは決してない。人間と自然の共生や戦争への批判など、その後の宮崎駿映画にもみられる宮崎映画のエッセンスが凝縮した形で表現されている。そういった意味で、本作は宮崎映画の“原点”といえるかもしれない。