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ウクライナ侵略の知られざるはじまりとは? 映画『世界が引き裂かれる時』は民族間の衝突を描いた衝撃作。忖度なしガチレビュー

text by 寺島武志

昨年の東京国際映画祭で上映され、観客に衝撃を与えたウクライナ映画『世界が引き裂かれる時』が公開中だ。2014年7月ウクライナのドネツク州で実際に起こったマレーシア航空17便撃墜事故を背景とし、ウクライナで懸命に生きる女性の姿を鮮烈に描く。本作の見どころに迫るレビューをお届けする。(文・寺島武志)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】

誰も知らないロシアによるウクライナ侵略のはじまり

映画『世界が引き裂かれる時』
映画世界が引き裂かれる時

「ロシアによるウクライナ侵略はいつ始まったのか」という問いに対し、「2022年2月」と答える人がほとんどであろう。筆者もその一人だった。この実話に基づいた作品を見るまでは…。

時は2014年にさかのぼる。ロシア国境に近いウクライナ・ドネツク州の小さな村。一見、のどかな風景が広がる田舎町なのだが、その住民も親ロシア派と反ロシア派に分かれ、対立し、その争いに、出産間近の妻・イルカ(オクサナ・チャルカシナ)とその夫・トリク(セルゲイ・シャドリン)が巻き込まれていく。

ある日、爆撃の衝撃で、家の壁に大きな穴が開き、2人の平穏な日常は一変。夫婦は壁の修復に取り掛かるが、親ロシア派と反ロシア派の対立は、友人関係や家族関係まで壊し、衣食住すら、ままならない状態に陥る。

そんな事情に加え、ロシア軍の地対空ミサイルによって、アムステルダム発クアラルンプール行きのマレーシア航空の民間機が撃墜され、乗客乗員298人が全員死亡するという痛ましい事件が起きる。

しかし航空機が撃墜された事実だけしか知らされず、その裏に何があるのかまったく知らされない住民たちは、互いに疑心暗鬼を生むことに繋がる。

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