普遍性のあるジョークシーンに昇華
賛否両論のLGBTQにまつわる描写を考察
本作の人気は日本国内にとどまらない。配信が開始されると、並み居る強豪を押しのけて、Netflixのテレビ・非英語部門でグローバルトップ10入りと大健闘。
その後もトップ10圏内を度々マークするなど、海外の視聴者も取り込んで、一大ブームを巻き起こしている。
しかし、一体なぜ、相撲という日本のローカルなスポーツをテーマにしたドラマが、かくも海外で大きな反響を呼んでいるのだろうか。以下、筆者なりに考察してみたい。
本作の隠れたポイントとして、LGBTQにまつわる描写を挙げることができる。序盤の第3話では、相撲好きのゲイの少年が登場する。彼は、猿将部屋きってのイケメン力士・猿岳(小林圭)のファンであり、「これ、猿岳さんに渡してくれませんか?」と小瀬にプレゼントを託す。小瀬がこっそり袋の中身を見ると、なんとお菓子とピンクの下着が入っている。
その後、小瀬は悪知恵を働かせ、猿岳がシャワーを浴びている姿を動画に収め、50万円でその動画を少年に売りつける。主人公のクズっぷりもさることながら、ここではゲイの少年がいじられ役も辞さず、喜劇的な役割を担っており、観る人によっては抵抗感を覚えるかもしれない。
しかしながら、このシーンをよく観てみると、決してゲイの少年をただ笑いものにしているわけではないことがわかる。
他の登場人物と同様、彼もまた自身の欲望に素直な存在として描かれており、不自然に聖人化されていない分、オープンな印象を与える。
そうした演出は、他の日本の映画・ドラマではあまり観られないが、アメリカのドラマや映画では頻繁に描かれており、海外の人が見ても笑える、普遍性のあるジョークシーンに昇華されている。少なくとも筆者はそう感じた。