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「自分の映画に出演して身も心もカスカスになりたい」
カメラの前に身をさらすことで伝わる“ニュアンス”

写真:武馬怜子
写真武馬怜子

―――先ほど仰ったお話は、『青春墓場』の世界観を理解する上でとても重要なものであると感じます。今回は、監督ご自身メインキャストでご出演されています。監督自身がカメラの前で身をさらすことに関して、お考えをお聞かせください。

「出演者にシーンのニュアンスを伝える上で、言葉よりも早いですよね。命がたぎっているニュアンスというか。とにかく私は、自分の映画に出演して身も心もカスカスになりたいんです。そういうスタンスで映画を撮る姿を見せること。『私の背中を見てくれ』というのが一種の演出になっているのかもしれません」

―――アクションシーンでも果敢に体を張っておられますね。

「自分に対しては何をやっても問題ないじゃないですか。過酷なことも自分には課せるので脚本に書き込むのですけど、私が率先して体を張ることで、周りが感化されることもあると思います。

ただし、正しく、無理のない範囲で感化されてほしいですけどね。私は過去に自分の頭を割っちゃったりだとか、役にのめり込みすぎて、喧嘩して警察沙汰になったこともあるので…。

そういう負の部分ではなく、表現として成立している部分を読み取って演じてほしいなと思います」

―――本作は暴力映画としてカテゴライズされるかもしれませんが、暴力描写で観客を興奮させるのではなく、むしろ暴力を拒否する気持ちをかき立てる。そんな作品になっていると思いました。

「私の映画って捉えどころがないと思うんですよね。人は映画を観る時に『この映画はこういう作風だ』という形で、見方をチューニングするじゃないですか。でも、私の作品はわざと散漫にするんですよ。コメディなのか、真面目なのか、ふざけているのか、本気なのか。

一つのテイストにまとめることは簡単なんですけど、散らした方が受け手にずっしりとした、重量感のある感触を与えられるかなと思っています」

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