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「そもそも役者と監督の立場は対等」
ハラスメントの温床となるムードを繊細に捉える

写真:武馬怜子
写真武馬怜子

―――今回、前作『ろくでなし』から6年ぶりの新作となったわけですが、その間、奥田監督は世の中をどのように見ていましたか?

「そもそも私、社会と接点がないんですよね。さっきもスタバの前を通ったんですけど、『どうやってこれを耐え抜いているんだろう』って、信じられない気持ちになります。ズラッと並んだお客さんを前にして、機械みたいになってコーヒーを作って…。俺だったら1日でも耐えられなくて死んじゃうなと。こういうこと言うと、周囲からよく『甘えている』って言われますが…」

―――奥田監督はSNSをやられてないですよね?

「やってないです。SNSは完全に掃き溜めになっていますよね。匿名で発言に責任を持たなくていいから、その場の思いつきで他人を傷付けて。Twitterなど、一時期の2チャンネルみたいになっているのではないでしょうか」

―――本作では、劇団コミュニティや漫画制作現場などにおける、ハラスメントの温床となるムードがとても繊細に捉えられていると思いました。

「今までに実際いろんな現場を見てきているので…。私もかつて、とある映画業界のお偉方から拳骨で殴られたこともありました。でも、この問題は特に女性にとって深刻です。

女優さんは、何でもいいやと思ってサラリーマンになった人とは違って、自分自身で過酷な道を選んできた人たちだから、なんとしてでも大成したいという気持ちは他の職業の人よりも強いと思うんですよ。悪い人間はその気持ちを利用して性的な搾取をする。

『てめぇこの野郎』と立場が上の人に怒鳴られたら誰でも萎縮しちゃうし、逆らえない空気に支配されてしまう。『役者は演出家のいうことを絶対に守らなければいけない』といった風潮がそういう問題を生むのかもしれませんが、そもそも役者と監督の立場は対等なんですよ。それがどこかで間違っちゃったんでしょうね」

―――奥田監督ご自身は、現場の風通しを良くするために実践されていることはありますか?

「正直、私も怒る時は怒っちゃうんですよ。集団作業をしていると、これは明らかに集中力が切れているなとか、同じミスばっかりするなという『ここで怒らないと現場の士気が保たれない』といったケースがどうしても出てきます。

みんなヘトヘトの中、一人が大きなミスをして、みんな『この野郎』と思っている中で、監督の私がピシャっと言って現場を鎮める。時と場合によってはそういう働きかけがどうしても必要になる。それでも、叱ったスタッフにはアフターフォローをするようにしています。そうしたこともあって、奥田組は割とみんな仲良しですよ」

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