「映画を撮らなきゃただのチンピラ」
映画への渇望感が生んだ焦り
―――2019年に撮影を終えて、公開までに4年がかかりました。撮り終えてから完成するまで、撮影素材と向き合う時間が長かったのではないかと推測するのですが、いかがですか?
「撮った素材は編集部に全部送ったので、私の手元にはなかったんです。編集スタッフは私が18歳の時から頼んでいる人です。その彼が編集したものを送ってもらって、そこから私が粗編するのに3ヶ月くらい掛かりました。まぁ、自分が出たものをそんな見ていられないですよ」
―――本作が完成するまでに様々なトラブルに見舞われたわけですが、その根幹には「映画を撮りたい」という、奥田監督の映画への渇望感がある気がします。
「私はバカなんですよ。普通の人は『スポンサーが決まらなかったら撮らないでしょ』となるところを、私は『何とかなる』って思うんですよね。“とにかく映画を撮りたいんだ”と。私なんか映画を撮らなきゃただのチンピラですから。電車乗っているとたまに大きい声を出している人を見かけるじゃないですか、私はほぼアレですからね。
生きている手応えは感じられなくても、私には、映画を撮って表現をしているんだという充足感や推進力が必要なんです。まあ、全部間違っているのかもしれませんが…」
―――そんなことはないと思います。久々に目眩のするような日本映画を観て、大変な刺激を受けました。
「私が一番好きな映画は『ロッキー』なんですけど、あれは低予算がひっくり返って、大ヒットした映画じゃないですか。そういうことが起きないかなと思っていて。それは観る人が判断することなんですけど」
―――一言で括れない映画なので、パッケージングが難しい…。
「だから宣伝を担当する方は大変っていう。俺はただ毎日筋トレしてるだけなんで(笑)」