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「私にとって暴力は日常と地続き」
ずっしりとした感触を残す暴力描写について

写真:武馬怜子
写真武馬怜子

―――演出や撮影スタイルに関しても質問させてください。カット割りは事前に行っていますか?

「ビジュアルはもちろん決めているところもありますが、溝口健二みたいに完璧に固めて撮るのではなく、当日芝居を見ないと分からない部分も多いですね。ただし、カットのニュアンスに関しては120%頭に入っています」

―――奥田監督演じる男が中華屋の裏で煙草を吸うシーンが何度か出てきますね。とある場面ではその前をチンピラが通過し、男を追って店の中に入っていきますが、カメラはじっと無人の光景を映し出しています。随所であえて暴力を見せない演出をなさっていますね。また、このシーンでは、チンピラが何度かフレームを出たり入ったりするのがとても可笑しかったです。

「暴力シーンってこれ見よがしに演出すると嘘くさくなるので難しいんですよね。私にとって暴力はシームレスで、日常と地続きなんです。

私、普通に日常で街を歩いていてボコボコ殴られたりしますからね。去年も殴られたし(笑)。そういう感触を映画で表現するんだったら、ああいう風に演出するしかない。喧嘩とか暴力って、はた目から見ると意外と滑稽に見えたりするんですよね」

―――奥田監督にとって暴力は常に重要なテーマだと思いますが、映画を撮り始めた頃に比べて、暴力に対する考え方は変わりましたか?

「暴力に対する考え方や撮り方は変わってないと思いますけど、人生に対する考え方は変わりましたね。私は人生上手く行かなかったので、より悲観的になりました。それによって作風が固くなりましたね。以前はもっと伸び伸び映画を撮っていたんですけど…。今は窮屈な映画を撮るようになっちゃったなと思います」

―――見方を変えれば、太い芯が通り、映画がより強固になったと言えるのではないでしょうか。

「いろんな意見を柔軟に取り入れるのが普通なのかもしれませんが、1人で考えに考えて、その結果、煮詰まって、自分の中で結晶化しちゃったんですよね。それが良く映る人もいれば、拒否反応を示す人もいるでしょうね」

―――では『青春墓場』は、今までの作品の中でもっとも奥田監督のエッセンスが凝縮されていると言えるのでしょうか?

「最新作なので、自分の本質に一番近いのかもしれませんが、刷新されていきますからね。先ほどから申し上げているとおり、この映画は随分前に撮影したものなので、そこからまた二皮くらい剥けているので」

―――『青春墓場』には2019年の奥田監督のエッセンスが詰まっており、それは日々更新されていると。

「これだけ社会が変化していく中で生きていたら、価値観も変わりますから。まあ、根本は変わらないかもしれませんが。

例えば2019年にChatGPTが流行するなんて想像もつかなかったでしょう。さながら『攻殻機動隊』の世界ですよ。ゴーストみたいな存在が跋扈する世の中になったら、それこそ命とか人間ってどうなるんだろう。生きていたらどうしても考えざるを得ないですよね」

―――次回作は今仰ったような、奥田監督の現在の思考が表出される作品になるのかもしれませんね。

「いや、これが上手く行かなかったら撮れないですから。家から上野公園が近いので、ダンボール買って住もうかなって思っているくらいなので(笑)」

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