改変ポイント⑤刺された後の場地のリアクションが違う
原作を遥かに超えた緊張感のある演出
東卍とバルハラの決戦の火ぶたが切って落とされた。大乱闘中、タケミチは場地を捜すが、なかなか見つからない。それもそのはず、場地は稀咲を襲撃するため身を潜めていた。
そして、千載一遇のチャンスが訪れ、稀咲へ襲い掛かる場地。そして稀咲とのタイマンを張る最中、一虎に背後から刺されてしまう…。ここまでは原作どおり。しかし、その後の、場地の一連のリアクションは大きく改変されている。
まずは原作の場地の動きを見てみよう。彼は刺されても「かすり傷だ」と気丈な素振りをみせ、その後も稀咲と喧嘩を続け、周囲を安心させる。しかし、しばらくしてから血が吐き出し、タケミチたちは、実は場地が重症だったことを知る。その直後、マイキーに「場地に何しやがった!」と叫ばれる稀咲は、「俺は何もしてねーよ」と、あくまで、一虎の一刺しが致命傷であると言い立てる。
上記のシーンは、映画版でどのようにアレンジされているのだろうか。
映画版で場地は、刺された途端、すぐに大量出血し、周囲は騒然となる。その後、場地は一虎に対するけじめと、「俺は一虎に殺されていない」と彼をかばうため、何と自ら切腹し、自害してしまう。
補足すると場地が切腹するのは、原作も映画も同じだ。現実的に考えれば、場地がすぐに大量出血する映画版の描写の方がリアリティーという点では優っていると言えるだろう。
また、これまた原作にはない、東卍もバルハラの面々も、敵味方関係なく、その場にいる全員が「救急車呼べー!」と慌てふためくところもきわめて現実的で、人の生死がかかった場面の緊迫感がリアルに表現されている。
そう、「血のハロウィン」などと大それたサブタイトルが冠されてはいるものの、描かれているのは、所詮10代の喧嘩合戦である。
そんな中、人が死んでしまったら、抗争の場は一瞬にして凍りつくだろう。暴力の恐ろしさを描く点でも、実写版は原作コミックを遥かに超えていると筆者は感じた。
また、この事件に至る経緯にも原作と映画版とでは違いがある。大乱闘の最中、一虎に「場地が東卍に寝返ったぞ」と伝えたキャラクターの違いだ。原作ではバルハラの半間、映画版では、表向きは東卍に加入している稀咲がその言葉を発するのだ。
この改変も、ポジティブに受け止めることができた。結局、黒幕である稀咲がこの役を担ってくれたことで、彼が一虎を操っている感がより増したと思えるからだ。