「心の中でツッコみながら観てほしい」映画『札束と温泉』ゲームクリエイターとしての顔も持つ、川上亮監督、独占インタビュー
現在公開中の映画『札束と温泉』。ゲームクリエイターである秋口ぎぐるが、川上亮監督名義としてメガホンを取る最新作。温泉宿を舞台に、修学旅行中の女子高生たちが、ヤクザの愛人が所持する札束を発見したことから起こる混乱を描いたクライムコメディー。今回は川上監督のインタビューをお届けする。(文・ZAKKY)
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【川上亮 プロフィール】
1976生まれ。主にライトノベルを執筆する日本の作家、ゲームデザイナー。2004年8月グループSNEに加入し、そのメンバーとして活動する際は「秋口ぎぐる」名義。『人狼ゲーム』シリーズの原作・脚本を手がける。株式会社コザイク代表。
「漫画的な表現を意識してもらった」
独自の演出術を語る
―――今作は、どのような成り立ちで出来上がったのでしょう?
「劇団ノーミーツから、コロナ禍の時期に、劇場公演ができなくなった某アイドルグループのためにオンラインにおける演劇の脚本を書かないかというオファーがあったんです。
当時、オンラインの演劇を例えばHKT48などがやっており、需要があったのですが、色々と事情があり結局ですが、企画を進めているうちにコロナも落ち着き、通常の劇場公演ができるようになったことからその話は頓挫してしまいまして。でも、脚本自体にはとても思い入れがあったので、映像化したいという熱が強まり、この映画化へとつながりました」
―――どうりで、舞台的であり演劇的な演出だと思いました。
「そうなんです。基本的には1カット1カメで撮っているのも、その名残です。結果的には映画化されてよかったですが、オンライン演劇のバージョンも撮ってみたかったし、観てみたかったというのも本音です。もっと言うと、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014)や『ボイリング・ポイント 沸騰』(2022)くらい長尺の1発撮りでやってみたかったので、また機会があれば、そのような手法にもチャレンジしたいですね」
―――なるほど。俳優陣の演技も、演劇的独特な雰囲気があると感じました。
「ああ、それはですね。僕の感覚で言うと漫画的な表現を意識してもらったんです。僕がライトノベル出身で、キャラクター像やセリフ回しはずっと漫画的なことをイメージしながら書いてきたので。だから、特にこの物語の主軸である女性56人たちにも全員が極端なくらいキャラが立っていて、漫画の登場人物になったくらいの気持ちで演じてほしいという、お願いはしました。
細かい演技プランの要望は特にしませんでしたが、皆さん、本当に素晴らしい表現をしていただいて、非常に満足です」