生き物のような「ハウルの動く城」ー映像の魅力
本作の一番の魅力は、やはり「ハウルの動く城」の造形を挙げなければならない。
これまで様々なメカニックが登場してきた宮崎作品。その描写は、無機物でありながら全体の調和が取れており、まるで生命が宿っているかのような動きが特徴だった。つぎはぎのハウルの城は、まさにこういった描写の到達点といえるものだろう。
この城は、『風の谷のナウシカ』の王蟲同様透明なセルに絵を描き、セルを動かすことで動きを表現する「ハーモニー処理」が施されており、アニメーションならではの視覚的な快楽に溢れている。また、「動く城」には足があり、ユニークな足取りで地上を練り歩くシーンが描かれるが、これは原作にはない、宮崎駿オリジナルのアイデアである。
随所に登場する魔法の描写も注目だ。特に、ハウルとサリマンの対決シーンやソフィと飛行するシーンからは宮崎の想像力の爆発が感じられ、観客をワクワクさせてくれること請け合いだ。
加えて、作中に登場する景色の無国籍感も魅力の一つだろう。特に本作では、城が動くため、さながら観光アルバムの様相を呈している。
ちなみに、ソフィーの暮らす町はフランスのアルザス地方やイタリアの街並みが、ハウルの城が歩いている壮大な草原は中央アジアのカザフスタンやウズベキスタンの風景がモデルになっているという。