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「俳優さんとああだこうだ言いながら映画を作りたい」
自身の演出スタイルについて

三原光尋監督 写真:武馬怜子
三原光尋監督 写真武馬怜子

―――その直後の警察所のシーンでは、藤竜也さんがさりげなく足を引きずっています。その様子がリアリティにあふれ、近年のクリント・イーストウッド作品のように、藤さんのありのままの身体がそのまま映っているようで、凄く感動しました。

「そう言われると嬉しいですね。僕もイーストウッド大好きで、いつも勉強させてもらっているので。“老いること”は恥ずかしいことでもなんでもなく、人間なんだから当然だと。

イーストウッドも小便をするシーンで、切れが悪いみたいなシーンをちゃんと撮りますからね。スターが見せなくてもいいような“老い”をあえてちゃんと見せています」

―――春を演じた麻生久美子さんも素晴らしいと思いました。とあるシーンで、小林克也さん演じるイタリアンシェフ相手に、豆腐におけるニガリの重要性について熱く語る長セリフは、ワンカットで撮影されていますね。

「春もちょっと変わっている人という設定で、豆腐の事を話し出したら止まらないっていうね。あのシチュエーションでいきなり熱く語り出すなんて、面白いですよね。仰るとおり、カメラを動かさず、ワンカットで撮っています」

―――ワンカットで撮られていることで、豆腐に対する熱い思いを持つ春というキャラクターの説得力が増していると思いました。凄く難しいお芝居だと思うのですが、現場では「カット割らずに撮らせていただきます」と伝えられたのでしょうか?

「カット割りのことを役者さんに話すことってあまりないんですよ。役者さんは1カットであろうが、10カットであろうが、こちらが『こういうシーンを撮りたいんだ』という意志を明確にすれば、しっかりと合わせてくれます。特に僕の現場ではモニターも出さないので、役者さんはカット割りを意識せずに、お芝居に臨んでくださっています」

―――三原監督はモニターを通してではなく、カメラ横でお芝居をご覧になっているのですね! 現在の監督だと珍しいスタイルかと思います。

「僕ももう年齢だけはベテランですから、『モニターって邪魔だな』といつも思っていて。モニターがあると、みんな芝居じゃなくてモニターを見ちゃうしね。

テレビドラマの演出をやらせていただくと、若い俳優がモニターチェックに来ることがあるのですが、モニター映りを気にしすぎると、芝居が限定されてしまう。それは演者が気を使うことじゃないと思っています。スタッフもモニターではなく、生のお芝居を一緒に見たほうが色々なことが共有できます。目の前の現象を撮る、という意識は大切にしていますね」

―――最初からそういうスタイルで映画をお撮りになられていたのでしょうか?

「かれこれ、ここ10年くらいは『モニター無し!』って言ってます。時と場合によってはモニターで映像を確認することもありますが、モニターを置いてみんなで見る、ということはしませんね」

―――監督がカメラの横で直にお芝居を見るわけですから、もしかしたら役者さんも嬉しいのかもしれないですね。

「傍にいますからね。何か質問されてもすぐに反応できますし。監督が芝居場から離れたところにいて、助監督経由で指示を出すのではなく、目の前でああだこうだ言いながら、一緒に汗かいてやっています。カメラの横に居て、俳優さんとああだこうだ言いながら、せっかくの映画を作りたいのです」

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