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オウム真理教をモチーフにした
二世信者の逃走劇

『カナリア』(2005)


出典:amazon

監督:塩田明彦
脚本:塩田明彦
キャスト:石田法嗣、谷村美月、西島秀俊、渡辺真起子、水橋研二

【あらすじ】

少年・光一(石田法嗣)は、母がカルト教団「ニルヴァーナ」に入信して以降、教団の施設で妹と一緒に暮らしていた。しかし、教団は無差別テロを起こし、崩壊。警察の介入によって、光一は妹と引き離され、児童相談所に預けられることになった。光一は祖父に引き取られた妹と会うために、児童相談所を脱走。金も持たず、ボロボロのスニーカーで東を目指す光一。そんな彼の前に現れたのは、援助交際に手を染める少女・由希(谷村美月)だった。

【注目ポイント】

『どこまでもいこう』(1999)、『害虫』(2001)など、ティーンエイジャーを描いた数々の傑作で知られる塩田明彦監督作品。主演の石田法嗣、谷村美月は本作を機にブレイク。西島秀俊、渡辺真紀子をはじめとした実力派の役者たちがカルト教団の信者に扮している。

2022年7月に起きた安倍元首相銃撃事件によって注目を集めているのは、二世信者の存在だ。二世信者とは自身の意志ではなく、親の入信にともない宗教団体に所属することになった者のこと。本作の主人公・光一も二世信者である。光一の年齢は12歳。ようやく自我が芽生えはじめたくらいの年頃であり、マインド・コントロールの影響が残っているため、信者以外の人物に反抗的な態度をとる描写も。

光一が元信者と再会するシーンでは、すでに冷め切っている大人たちとの対比が際立つ。自分の意志で教団に入信した大人よりも、二世信者の光一にマインドコントロールの影響がより強く残ってしまっているのはいかにも皮肉だ。少年の鋭いまなざしによって痛烈に批判されているのは、心の弱さからカルトに傾倒し、教団が瓦解したらすぐに手のひらを返す大人たちの脆さに他ならない。

周囲の大人に依存せず、自分の力で未来を切り開いていこうとする少年たちの歩みは、もはやカルトを寄せつけない力強さがみなぎっている。『カナリア』は言葉ではなく、アクションによってカルト教団の欺瞞を撃つのだ。

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