『花腐し』のキャスト陣を魅了した荒井監督の脚本とは?

©2023「花腐し」製作委員会
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脚本家として、日本映画史に残る数々の傑作を手掛けた荒井監督の脚本は、俳優陣を魅了したという。

まずは綾野が「脚本の段階で完成されていたので。『これを実写化するのか』という畏怖心みたいなものがあったんですけど、でもこれぞ脚本というものに久々に出会ってしまったという思い。それ以上に荒井組として映画の中に飛び込みたいという思い。そして(柄本)佑くんと(さとう)ほなみさんと一緒にその時間を過ごしたいという思いの方が勝って。思い切って飛び込んだんですけど、とにかく楽しかったですね」と充実した表情。

そして「僕も面白いなと思いました」と続けた柄本は、「詳しくはネタバレになっちゃうんで、あまり言えないんですけど、(脚本を読んで)荒井さんが“いよいよそこにいくのか“と思って、本当にワクワクしたんです。そんな作品に参加できて非常に光栄です」と晴れやかな表情を見せた。

©2023「花腐し」製作委員会
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今回の役をオーディションで得たというさとうも「オーディションの時にいただいた脚本は二つのシーンだけだったんですけど、そこを読んだだけでもすごく印象深いシーンで。そこだけで『花腐し』のすべてというわけではないけど、大事なところがかなり詰まっているところでした。その時点で心をつかまれた感じはありましたね」と述懐。

綾野と柄本は、これまで何度か共演経験があるものの、しっかりと共演したのは今回が初になるという。「ここまでしっかりとご一緒するのははじめてだったんで。本読みの段階で、(柄本の)セリフの初速の速さというか。迷わずポンと出てくる感じにけっこう圧倒されて『まずいな』という感じがあったんです」と正直な思いを吐露した綾野。

その後、撮影を一緒に進めるうちに「それはほなみさんもそうなんですけど、何回も一緒にやっているような自然な関係になれたのはとても大きかったですね」といい、「(柄本は)声が芳醇(ほうじゅん)で、とてもうっとりました」としみじみ付け加えた。

©2023「花腐し」製作委員会
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しかし一方の柄本も、実は綾野に対しての焦りがあったと告白する。「僕も本読みの時に、荒井さんのセリフと、綾野さんの親和性の高さにビックリしたんです。本読みが終わった時に『ヤバい!』と思ったんですよ。荒井さんのセリフにフィットしている綾野さんの声にけっこう焦った記憶がありますね」と明かしつつも、「でもお芝居が始まると、なんだか初めてとは思えないくらいすんなりとやり取りが始まった感じでしたね」と振り返る。

そしてそこにたたみかけるように綾野が「実はこれも今日発覚したんですけど、二人とも2003年デビューで(芸能生活)20年だったという。すごいですよね」と付け加え、二人で笑い合った。

本作のタイトルに引用された万葉集の和歌<花腐し>とは、きれいに咲いた卯木(うつぎ)の花をも腐らせてしまう、じっとりと降りしきる雨を表現しているが、劇中ではそのタイトル通り雨のシーンが印象的に登場する。

そのシーンを振り返った綾野が「ずぶぬれでしたね。やはり映像に映るためには(大量の)雨が必要なので、ずぶぬれでした」と笑ってみせると、柄本も「わりと雨のシーンって、カメラの手前の人物だけに雨を降らせていたりするんで、よく見ると奥の方は晴れているとか、奥の方は地面がぬれてないなと感じることもあるんですけど、本作はそういうあら探しをしても見つからないです」と太鼓判。

さらに綾野が「50メートル先まで雨を降らせてたんで、感動しちゃいましたね」としみじみ語ると、柄本も「しかもモノクロなので、普段の1.5倍くらい降らさないと画面に映らない。だから画面に見えているよりもわれわれはもっと降っていますよね。でもああいうのっていいですよね。雨を降らせる側も楽しいでしょうし」とコメント。

綾野も「まさに職人技ですね」としみじみ付け加えた。

そんな舞台あいさつもいよいよ終盤。最後のコメントを求められた荒井監督が「もし観て良いと思ったら宣伝してください、そうすると、もう1本撮れるかもしれないんで」と呼びかけると、さとうも「本当にお伝えできることは感謝ということですね。とにかく観て楽しんでください」とコメント。

さらに柄本が「決して皆さまがガッカリするような出来ではございません。大満足していだける出来だと確信しておりますので……。皆さんは共犯者ですからね。われわれと一緒に『花腐し』を盛り上げてくれたら幸いです」と続けると、最後に綾野が「大切に、かつ大胆に、この作品を脚色しながら、映像化しました。そして今日、今から皆さんに観ていただくというのがこの映画の始まりだと思いますし、皆さんが観ていただく中で感じられた感情こそが、この映画を本当の完成に導くと思っています。ぜひ楽しんでいただけたら。またお会いしましょう!」とこれから映画を観る観客に向けてメッセージを送った。

【作品情報】

出演:綾野 剛、柄本 佑、さとうほなみ、吉岡睦雄、川瀬陽太、MINAMO、Nia、マキタスポーツ、山崎ハコ、赤座美代子、奥田瑛二
監督:荒井晴彦
原作:松浦寿輝『花腐し』(講談社文庫)
脚本:荒井晴彦、中野太
製作:東映ビデオ、バップ、アークエンタテインメント
制作プロダクション:アークエンタテインメント
配給:東映ビデオ
2023年/日本/137分/R18+
©2023「花腐し」製作委員会
公式HP:hanakutashi.com

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