「映画のためなら何でもするような人」
俳優・プロデューサー森岡龍との2度目のタッグ
―――前作ではビデオテープが登場しましたが、本作では8ミリフィルムが登場します。
「森岡くんがフィルム大好きなので。そういうガジェット的な飛び道具としてフィルムを使いたいということで登場させました。
8ミリフィルムはモニターで確認することが出来ないので、カメラマンとの信頼関係も必要だし、現像されないと仕上がりがわからない怖さはありましたね。ただ、8ミリで撮ったことがなかったので、貴重な体験でした」
―――フィルムが登場することで、映画に温かみがプラスされているように感じました。先ほど、主人公を演じた藤江琢磨さんに当て書きをされたと伺いましたが、藤江さんのどういった要素が脚本に投影されたのでしょうか?
「撮影までに何回か会わせてもらって、どういう人なのか掴みながら脚本を書いたんですけど、現代人っぽさがないのと、趣味でスケートボードをやっていてストリートな雰囲気が高円寺の街並みとマッチするだろうなと思いました。
劇中で歌を歌ってもらっているんですけど、藤江くんはファルセット(裏声)が良いので、大瀧詠一の『夜明け前の浜辺』は合うんじゃないかと思い選曲しました。元々好きな曲だったので使いたかったっていうのと、ロケ地が浜辺だからという理由もあるんですけどね」
―――随所で登場する諏訪太朗さんの存在が物語にパンチを効かせていると感じました。
「他のキャストが若い世代だったので、年齢層が散らばる方がいいんじゃないかということで、地元の漁師みたいなキャラクターにしたいと考えました。
諏訪太朗さんや斉藤陽一郎さんは、かねてより出演作を拝見していて、いつかご一緒してみたなと思っていたので嬉しかったです」
―――キャスト陣とのディスカッションはされましたか?
「撮影期間が短かったのもあり、撮影前に2日くらいリハーサルをさせてもらったのですが、そのお陰で現場では混乱せずに何とかやり切れたかなと思います。
脚本がギリギリに仕上がったので、俳優部からしたら聞きたいことが沢山あったと思うんですけど、役に対して話し込んだりする時間が持てなくて、役作りに関しては俳優部任せになってしまったのは今後の課題ですね。もっと丁寧に役について話せる場を持てたら良かったなと」
―――森岡龍さんとは前回は俳優として、今回はプロデューサーとして関わったわけですが、改めてどんな方でしたか?
「とにかく映画少年です。僕は高校でバンドをやっていて、全然映画少年じゃなかったけど、彼は中学生くらいから役者として活躍していますし、映画をやっている時は目がキラキラしている…というか狂っていると言ってもいいくらい。映画となると飛びついちゃう人ですね。
『東京の恋人』の時は、役者と監督という立ち位置で気を使っていた部分もあったんですけど、映画のためなら何でもするような人なので、遠慮しなくて良かったんだなと。今回ご一緒して認識が変わりました」