「自分に合う演じ方を見つけられた」
本作で発見した自分にマッチする演じ方
―――長谷川役の山中さんとは撮影前に何かやりとりはされましたか?
「山中さんとも特にやりとりしてないんです。普段はとても優しい方なんですけど、長谷川になると凄く怖いし、気持ち悪くて…(笑)。
果歩が長谷川からお金を出されて受け取るシーンで、取ろうとした時にパッと除けられるんですけど、これは脚本になく山中さんのアドリブなんです。
役としては惨めな気持ちになり、辛かったんですけど、リアクションを引き出すような細かい動作を自然にやってくださったので、有り難かったです。『自由にお芝居をやっていいんだ』と思わせてくださり、役者として改めて尊敬を深めました」
―――感情的なシーンを演じる時は、事前に気持ちをシミュレーションするなど、意識していることはありますか?
「実は私も『みんなどうしてるんだろう』とずっと思っていて…。10代の時に初めて行ったワークショップでは、先生から『前日から心に涙を溜めておくんだ』と教わったのですが、本作ではあえて『今日のシーンについて何も考えずに現場に行こう』と思い、実践してみたら“結構合うかも”と思いました」
―――自分に合う演じ方を見つけられたんですね。感情的なシーンを撮った後は、気持ち的にスッキリしますか?それとも引きずってしまいますか?
「シーンにもよりますけど、最後、上野君に向かって泣きながら叫ぶところは、撮り終えた後、スッキリした気持ちになりました。でも、お母さんと机で対峙するシーンは終わってからも悲しかったです」
―――平波亘監督とは本作が初タッグとなりました。監督の演出はいかがでしたか?
「今回は、内容的に重い題材なのもあり、監督によってはディスカッションを重視する方もいると思うのですが、今回、平波監督は基本私にお芝居の解釈を任せてくださいました。私自身もあまり聞くこともしなかったですし、お互い言葉にしないことの良さを感じていたのかなと思います」
―――通じ合っていたんですね。現場で受けた演出で印象的だったものはありますか?
「平波監督の他の作品と本作は全然違うテイストなのですが、トイレットペーパーを持ち帰ろうとする一連のシーンは監督らしさが出ていて、良いアクセントになっていると思いました」
―――上野君とのシーンは沢山ありましたが、山脇辰哉さんはどんな方でしたか?
「格好悪いんだけど格好良い、といった独特のキャラクターを上手に演じていらっしゃいますよね。
個人的には、コメディを体現できる役者さんだなと思うんですけど、ふとした時の切ない表情が『本当はどういうことを考えているのだろう』と思わせる。どんな役でも深みのあるキャラクターに変えられる方だと改めて思いましたね」