時代と共に変化する「プリキュア像」
さらにプリキュアがすごいのは、シリーズを経るごとにその対象者を現在進行形で広げ続けている点である。冒頭にも書いた通り、初期の頃は中学生のみだったのが、高校生、小学生、赤ちゃん、大人、異世界人、妖精、アンドロイド…とどんどん増えていった。
しかも、これらは全て「女」という暗黙の大前提があったのだが、今年シリーズ初の「男」のプリキュアも登場し、ついに性別の枠組みも越えることとなった。
興味深いのは、これらと呼応するかのように、プリキュアのキャッチコピーや作中でのメッセージも時代と共に変わっている点だ。
「女の子は誰でもプリキュアになれる」だったのが「女の子だってヒーローになれる」、「男の子だってお姫様になれる」と変わっていき、20周年の今作では明確にプリキュアがヒーローとして描かれ、男の子プリキュアも初登場した。
このように、自ら打ち出したコンセプトを、時には自ら破壊して、時代に合わせて再構築し、時代を先取りして挑戦していくのがプリキュアシリーズなのだ。
プリキュアとは何なのか。その問いに明確な答えはない。
けれども、むしろその終わりのない答えを、時代に合わせて追求し続けていく姿勢こそが、プリキュアなのかもしれない。「ますます多様化していく今の時代に、あなたはどうなりたい?」とまっすぐ問いかけてくれるし、まっすぐ追い求めてくれる。
現代は、生まれも性別も肩書きも関係なく自由に選べる時代だ。しかしその反面、キャリアや所属する場所や人間関係を、自分で判断して選択しなければならないという、新たな悩みも発生している。だからこそプリキュアは私たち大人の胸に響くのだろう。
プリキュアに変身することはできなくても、プリキュア的な心を持つことは今この瞬間からできるのだから。その意味では確かに、誰でもプリキュアになれるのだから。
(文・唐梨)
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