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「映画は映像で語るもの」
映像で魅せる多彩なカメラワーク

写真:武馬怜子
写真武馬怜子

ーーリハーサルは行いましたか?

「アメリカだとリハーサルは本当にキッチリやって撮影前に全俳優が実際に全シーンの演技をこなし、演技を事前にしっかりと固めていくのが通例なので、今作においては絶対に撮影前にリハをやりたいと各方面にお願いしました。

その理由として、監督の仕事をしていると撮影現場では実際に俳優にイチからディレクションを与えている時間はないくらい、スタッフにカメラの動きを指示したり、照明の動き、美術スタッフへの指示出し…等々、諸々の撮影進行の実際の段取り等が多すぎるので、現場に来た時は俳優自身がもう、誰の指示を受けなくても、そのシーンの演技を完全にマスターしている状態でなくてはいけないんですよね。

また、リハーサルの利点として、俳優が演じるキャラクターについてじっくり、俳優本人と話しこむ時間があるので、演じる俳優本人が、そのキャラクターに対して理解を深める事ができるんですよね。

あと僕自身が俳優という職業の1番の大ファンなので、とにかく俳優本人に自信を持って気持ちよく演じてもらいたいと思ってます。結局、その俳優の自信が自然と画面にも出るんで、シーンのクオリティ自体も良くなっていくんですよね。」

ーーではリハーサル中に、俳優の方とディスカッションをしてシーンを構築したんですね。

「そこで作り直したセリフもいっぱいあります。具体的な例をあげるとしたら、オギー・ジョーンズさんが演じたジョージと坂井翔くんが演じたノアが出会うところは僕が元々、書いたセリフがあまり良くなくて、リハの時に2人に『適当に喋ってみて』と言って、アドリブで話す二人でを見ながら、面白い部分を僕がメモしていくという形で、その場でリアルタイムで脚本を書き直しました。

そのシーンのセリフは3人で作り直したりしたので、内容が大幅に変わることはないですけど、あえて言うなら、リハーサルで実際の俳優の演技をみながら、最終稿を作る感じですかね」

ーーその時はテスト撮影も行いましたか?

「iphoneのカメラでリハーサル全部撮影しますね。映画は舞台じゃないので、カメラに映ってるものが全てで、それでしか判断が出来ないんですよ。だから上手くいってるかどうかの基準は、全部、撮影した素材を通して確認してます」

ーー多彩なカメラワークで、バラエティーに溢れたワークだと思いました。

「そこの部分は本当にすっごく、すっごく!こだわったので、そこに気づいてくれてメチャクチャ嬉しいです。

映画のカメラワークが心から大好きなので、僕の中に引き出しや知識がとにかく一杯あって、“僕が学んだあらゆるテクニックを映画内で全部使ってみたい!”という勢いで、本当にありとあらゆるテクニックや映像効果を試していますね。

編集してる最中や、撮影中も、結構、難しいテクニックの場合は、どんどん失敗してもいいと思いながら、大胆にやっています。だからよく撮影監督とか編集マンには『出た!テクニックバカ』と言われるんですけどね(笑)。

でも以前は撮影テクニックにはそんなにこだわりがなかったんです。でも、ある日、自分の過去作品を見た時に、全くカメラワークがなく、小手先にカメラを動かしているだけというか、映像表現としては頭打ちになってることに気付いて…。それから徹底的に自省して、改めて現代を生きるフィルムメーカーとしてのあり方を模索するようになりました。

そもそも映画というのは、映像で語らないといけない芸術形態であり、では、映像で語るとはどういうことなのかという事をひたすら自問自答を繰り返し、突き詰めました。結果として、“映画全編、カメラの動きで語るしかない”というところに行き着きました。

だから、最近の海外の映画やドラマのワークの主流やトレンドである、律儀にカットを割らずに、いかに1カットで面白い動きをつけながら、流麗に人物の動きを追いつつシーンを構築していくかというワークも積極的に取り入れています。

だから、撮影に関しては、全編に渡り、どのようなショット構成で撮るかというのは、本当にめちゃくちゃ考えに考え抜いて撮影していますね。」

ーーカメラワークがまるでアトラクションのような動きをしていると感じました!撮影自体はスムーズに行われましたか?

「カメラワークに本当にこだわっている分、俳優とカメラの動きをピッタリ合わせなきゃいけないので、そのタイミングを合わせるために、スタンリー・キューブリック並みに、何回も同じシーンの撮影をするんで、だんだん撮影が押してくると現場がヤバイ雰囲気になってくるんですよ(笑)。

でも僕はアメリカの撮影現場で培ったフランクな雰囲気で楽しくやっているので、そんな状況でもスタッフやキャストと冗談を言い合いながら、ポジティブな空気感に変えていき、しっかりと乗り切る事ができましたね。

山下幸輝くん演じたリヒトたちが病院の控室で話してるシーンは、ワンカットで撮ってるので、カメラが動いた瞬間に映ったばかりの人物が喋り始めたり、別の人物が移動してフレームインしてきたり、と本当に何回も試しました」

ーーアメリカTVドラマ『ER緊急救命室』みたいでした(笑)。

「そうそう!だからちょっとでもタイミングがズレると上手くいかなくて、結局8回くらいやったけど、1回くらいしか上手くいかなかったかな」

ーーでは、撮影監督の方とはかなりディスカッションをされたのではないでしょうか?

「現場ではカメラマンと監督は夫婦みたいに意思疎通してないといけないと思ってるので、アメリカで学んだ僕の撮影スタイル、そして、僕が書いた全シーン・全ショットの絵コンテというか…字コンテですね。

それを事前に全部共有してるので、本当に“パートナー・イン・クライム”というか“阿吽の呼吸の仲”っていうのですかね?テレビゲームで言うと、マリオとルイージの関係みたいな感じでした(笑)」

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