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「悲しい現実を受け入れつつ理想を描き続ける」映画『みなに幸あれ』監督・下津優太、単独インタビュー

2021年、第1回「日本ホラー映画大賞」の初大賞受賞作品である『みなに幸あれ』。ホラー映画の巨匠・清水崇が総合プロデューサーを務め映画化となった。メガホンを取ったのは今回商業映画監督デビューとなった下津優太監督。影響を受けた監督や、作品を通して伝えたい社会の意識について、幅広くお話を伺った。(取材・文:タナカシカ)

「白いキャンバスが汚れていくような気持ち良さ」
主演・古川琴音に感じたもの

撮影:武馬怜子
撮影武馬怜子

―――閉鎖的な空間で起こる不気味さや、逃げることができないような雰囲気に、シンプルにドキドキしながら拝見しました。本作は清水崇さんが総合プロデューサーを務めていますが、本作の企画が立ち上がった経緯から伺えますでしょうか?

「2021年にKADOKAWA主催の『日本ホラー映画大賞』で『みなに幸あれ』の前身となる11分の短編映画が大賞に選ばれました。その副賞として長編映画を作らせていただくことになったんです。

ホラー映画大賞の審査委員長が清水崇監督で、そのご縁で総合プロデューサーに入っていただきました。シナリオづくりは、僕と脚本家が書き上げた台本を清水監督に読んでいただき、ご意見をいただいてそれを反映するという形で進めていきました。

清水監督からは脚本作りに加え、編集の段階で色々な意見をいただきましたが、基本的には観客とのコミュニケーションの部分、『これだとちょっと分かりにくいよ』といったことをメインにアドバイスいただきました」

―――古川琴音さんを主演に抜擢された決め手は何だったのでしょうか?

「古川さんはすごく個性的な俳優さんですが、素朴な役もできる、演技力に優れた女優さんです。彼女に主人公を演じてもらえたら、ダークサイドに堕ちていく過程で、白いキャンバスが汚れていくような気持ち良さを表現できるんじゃないかと思い、お願いしました」

―――今回、古川さんをじっくりお撮りになって、どんな印象を持たれましたか?

「現場では『これが本物の女優か!』と何度も思いました。明確なビジョンを持って現場に入っていただいたので、正直、僕はほとんど何も言っていません。にもかかわらず、僕がイメージした演技、もしくはそれを超える演技を毎回披露してくれて。ほとんどワンテイクで進めていきました。古川さんだからこそ成り立った映画だと思っています」

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