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映画と原作小説の違い

中西貴子の中条あやみGetty Images

映画と原作小説には、いくつかの違いがある。その違いを理解した上で映画を観ると、より映画の魅力が増し、世界観を楽しめるはずだ。

特に異なっているのが、舞台となる山荘の設定である。映画では山荘は、次回作の主役オーディションという設定であり、そのためか俳優たちもライバル意識が強い。

しかし原作小説では山荘は、オーディション通過後の舞台稽古という設定のため、ライバル意識というよりも全員で舞台稽古をうまく乗り越えようという一致団結感があるのである。

また山荘が舞台となる理由についても、映画では詳しく触れられていなかったが、原作小説では麻倉雅美の実家がある飛騨高山から近く、麻倉雅美の叔父である小田伸一が経営しているペンションだから、という明確な理由がある。

また小田伸一が隠しカメラや盗聴器、マジックミラーや隠れ場所を設置したという細かい設定までが描かれており、映画で感じた違和感を払拭してくれている。

続いて人間関係も異なっている。特に雨宮京介と元村由梨江の関係性である。

映画では2人は親しい先輩後輩として描かれているが、原作小説では婚約している恋仲として描かれており、雨宮京介に恋している麻倉雅美が自作未遂に至った動機づけがされているのが特徴だ。

また同時に主人公である久我和幸が元村由梨江に恋する男として描かれており、久我和幸の冷静さと元村由梨江に対するアピールが丁度良い笑いとなり、世界観に人間味と深みを与えている。

ここまででも映画と原作小説にはかなりの違いがあるが、最も異なるのはラストシーンの展開である。原作小説の結末がかなり呆気ない印象を与えるのに対し、映画では『ある閉ざされた雪の山荘で』を麻倉雅美主演で舞台化する、という感動的なシーンで幕を閉じるのである。

詳細は次のページで詳しく触れるが、このラストシーンでは、本作の特徴である三重構造のトリックが更に一つ上の段階である四重構造へと変化する。

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