神と人間の視点
本作では神と人間の視点でストーリーが展開されている。
神の視点とは「俯瞰する視点で物事を見たり、他者の内面や過去現在未来を見通せる視点」のことであり、本作であれば麻倉雅美と私たち観客の視点こそが神の視点である。
麻倉雅美の場合は、防犯カメラや盗聴器によって全ての出来事を俯瞰視することが出来る。そうした行動に出る麻倉をさらに俯瞰したレベルから見守る我々観客は、物語を通じて全ての出来事をどの登場人物にも増してクリアに見通すことができる。
特に印象的なシーンは、登場人物の行動を天井から俯瞰視している演出であり、これこそが神の視点そのものである。
また神の視点では、麻倉雅美が隠れている遊戯室は描かれていないのもポイントだ。何故なら遊戯室を神の視点で描いてしまうと、ストーリーのネタバレになってしまうからである。
対して人間の視点とは、事件の真相を暴く名探偵役である久我和幸の視点である。しかしあくまで人間の視点であるため、肝心の犯行現場を見ることは出来ず、久我和幸の主観として描かれている点がポイントだ。
そのため久我和幸をはじめとした登場人物たちは、「次は自分が本当に殺されてしまうかもしれない」といった恐怖や猜疑心を抱えることになる。
このように神の視点と人間の視点は異なるものであり、だからこそ2つの視点が掛け合わさることで映画の面白みが増している。
原作小説に従うのであれば三重構造のトリックになるが、あえてラストシーンを変更して四重構造を導入した実写版のスタッフに拍手を送りたい。
(文・ニャンコ)
【作品情報】
タイトル:『ある閉ざされた雪の山荘で』
監督:飯塚健
脚本:加藤良太、飯塚健
原作:東野圭吾「ある閉ざされた雪の山荘で」(講談社文庫)
出演:重岡大毅、間宮祥太朗、中条あやみ、岡山天音、西野七瀬、堀田真由、戸塚純貴、森川葵
音楽:海田庄吾
主題歌:「FICTION」(WEST.)
2024年製作/109分/G/日本
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©︎2024映画『ある閉ざされた雪の山荘で』製作委員会
©︎東野圭吾/講談社
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