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デビューして5年経っても変わらない演技への思い

写真:宮城夏子
写真宮城夏子

 

―――二つの文化の狭間で引き裂かれながら、テルはそうした状況を逆手にとって、ユーカㇻを普段われわれが使っている和人の言葉に翻訳するという誰も成し得なかったことを実現するわけです。

「もし知里さんがいらっしゃらなかったら、今の世界にユーカㇻが知られることはなかったかもしれません。とはいえ、当時は、知里さんも『自分にしかできないことをする』とは思ってなかっただろうし、ただただアイヌとして認められなきゃいけないという気持ちで勉強していたのかなと、個人的には思います。それが、こうして身を結んだ…って言っていいのか分からないですけど、結果、アイヌの歴史を後世に伝えることになった。

それは今の私たちにも通じる話でもある気がしていて、今、我慢しながらやっていることがあって、それはもしかしたら将来、自分にしかない強みになるかもしれない。本作はとても辛い出来事を描いてはいるのですが、勇気をもらえる、希望を持てる部分もあると思っています」

―――歴史上の限定された時期を描いた作品である一方、普遍的なメッセージをもった映画だと思いました。

「完成した作品を観て、『あつい胸さわぎ』と似たような部分があることに気付きました。テルがどんなに辛い状況に追い込まれても、必ず、助けてくれる人、味方になってくれる人がいる。

それは『あつい胸さわぎ』を観た時にも同じ印象を持って。乳がんを患って、1人で葛藤する中、お母さんとか周りの人々が気を配って、諦めないで彼女を見守ってくれてたから前向きな気持ちになれたと思うんです。

今回の作品でも、人の繋がりを凄く感じました。それは今を生きる勇気、辛い出来事に立ち向かう希望を与えるものになっていると思います」

―――最後に少し吉田さんご自身についてお聞きしたいのですが、2023年でデビュー5周年を迎えられましたが、デビュー時から現在とで演技へ向ける意識にで変わったところはありますか?

「根本的なことは全然変わってないと思います。ただただ楽しいです。この作品も先にお話ししたように準備がとても大変ではありましたが、やっぱり演じて良かったなと思いますし、終わった後、寂しくなりました。だから“演技が楽しい”という根本的な気持ちは一切変わりません。

実は私、結構飽き性でして。これまで習い事を結構たくさんやってきましたが、中途半端なところで辞めがちだったんです。だから、自分の意志で始めたことがこんなに継続するなんてことが初めてで。『自分のやりたいことが出来るなんて幸せなことだね』って、いつも母から言われているのですけど…有難いなって思います」

(取材・文:山田剛志)

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