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リム・カーワイ監督手掛けるバルカン半島3部作の集大成。映画『すべて、至るところにある』初日舞台挨拶レポート

text by 編集部

パンデミック、戦争、混沌とした現代に問いかけるサイバーパンクな叙事詩! リム・カーワイ監督の最新作映画 『すべて、至るところにある』 が、2024年1月27日(土)より公開中だ。この度、1月27日に主演のアデラ・ソー、リム・カーワイ監督による初日舞台挨拶がシアター・イメージフォーラムにて開催された。

“インディペンデント映画の名匠”リム・カーワイが巨匠ジョニー・トーに敗北!?

©cinemadrifters
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映画『すべて、至るところにある』が1月27日(土)にシアター・イメージフォーラムにて、公開初日を迎えた。上映後に、本作監督のリム・カーワイと、主演のアデラ・ソー(エヴァ役)が登壇した。

大阪を拠点に、香港、中国、バルカン半島などで映画を製作し、どこにも属さず彷徨う“シネマドリフター(映画流れ者)”を自称するリム・カーワイ監督。

『すべて、至るところにある』は、リム・カーワイ監督の『どこでもない、ここしかない』(2018)、『いつか、どこかで』(2019)に続くバルカン半島3部作の完結編だ。

『どこでもない、ここしかない』『いつか、どこかで』の2作が劇中では主人公ジェイ(尚玄)の監督作品として登場し、バルカン半島の美しい景色と旧ユーゴスラビアの巨大建造物(スポメニック)を背景に、現実と虚構を行き来しながら物語は進んでいく。

パンデミック、戦争という全世界が体験した未曾有の現実の中で、人間の孤独と希望を映し出したバルカン半島3部作の集大成ともいうべき作品になっている。

©cinemadrifters
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最近は(一部で)“インディペンデント映画界の名匠”とまで呼ばれるようになったリム・カーワイ監督。

初回上映後に登壇し、客席を見渡し「今日は“世界的巨匠”ジョニー・トー監督が来日していますね。僕でもジョニー・トー監督のトークイベントを観たかったです。でもそんな中でも、ここに来ている観客の皆さんはリム・カーワイの新作を選んでくれました。本当にうれしい!ありがとうございます!」とリム・カーワイ監督が挨拶すると、客席に静かな笑いが漂った。

『いつか、どこかで』に続いて、本作でも主役を務めた、アデラ・ソーさんは香港から緊急来日し、「昔、日本に留学していたこともあって、いまでも日本が大好き。去年、リム監督とタリン・ブラックナイト映画祭のワールドプレミア上映に立ち会うことができて感動しましたが、今日みなさんと一緒にスクリーンで本作を観ることができてとてもうれしいです。」と挨拶した。

本作はリム監督、尚玄さん、アデラさん、カメラマン、録音技師の5人が、車1台に乗り、セルビア、北マケドニア、ボスニア・ヘルツェゴビナを旅しながら撮影された。

「旧ユーゴスラビアの巨大建造物(スポメニック)を見つけたら撮影したり、シナリオなしの即興スタイルで、過酷な撮影だったと思います。そんな撮影に参加してくれたアデラさんと尚玄さんには感謝しかありません。」とリム監督が撮影を振り返った。

『CAME&GOカム・アンド・ゴー』『あなたの微笑み』に続き、リム組の常連で本作のもうひとりの主役ジェイ役の尚玄さんは、インドネシアで新作の撮影中のため初日舞台挨拶に登壇できなかった。

アデラさんは尚玄さんについて、「私は女優の役で、相手は映画監督役ということしか決まっていませんでした。映画監督役ということはリム監督が投影された役なんだと思っていました。でも尚玄さんに会ったとき、これはリム監督なんかじゃない!!と心の中で叫びました。あまりにハンサムで紳士で背が高くて、リム監督とはかけ離れていました。でもリム監督はいい人ですよ(笑)」と話すと会場はあたたかい笑いに包まれた。

「バルカン半島でロケハンしている時に、尚玄さんから3週間だったらバルカン半島に行けるよと連絡があった。まさか参加してもらえるとは思わなくて、これは映画監督の役を尚玄さんにやってもらおうと思った。尚玄さんはパゾリーニ監督になんとなく似ているので、気難しい映画監督役にピッタリと思い、そこからジェイという役が固まっていきました。だから尚玄さんに僕自身を演じてもらっているなんて、そんなことはないですので安心してください(笑)」と、リム監督が弁解した。

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劇中、エヴァがジェイの映画に出演している時に「映画監督は自分勝手!」と言って、喧嘩するシーンがある。

観客からあれは実際のエピソードか聞かれると、「アデラさんとは一緒に2本映画を作りましたが、一度も喧嘩はしていません。とても穏やかな撮影で、あれは実際のエピソードではありません。でも『どこでもない、ここしかない』に出演したトルコ人のフェデル(フェルディ・ルッビシ)が今回ジェイの友人役として出演しています。フェデルが「家族が反対するから、リムの映画にはもう出たくない」と言っていたのは本当です。でも結局出演してくれました。みんなの優しさに支えられていますね。」と、リム監督がキャストへの感謝を伝えた。

本作の見どころのひとつに旧ユーゴスラビアの巨大建造物(スポメニック)がある。「僕にとって人間がその空間の中でどう存在しているのかということに興味がある。その空間が人間の心に及ぼす影響を切り取っていきたい。」と、リム監督が本作の見どころを語った。
「日本の観客の方は映画を読み取る力があると感じています。この映画の細部にこめられたメッセージを受け取ってくださってありがとうございます。」とアデラさんが挨拶すると、リム監督からサプライズの花束が渡された。

「今日は集客ではジョニー・トー監督に負けてしまいましたが、明日はもうジョニー・トー監督は帰国してしまいます。でも僕はずっといます!2月8日まで毎日トークイベントをします!明日からもジョニー・トー監督に負けない気持ちで頑張ります!!」と、熱い意気込みで締めくくると会場は大きな拍手に包まれた。

【初日舞台挨拶 詳細】 ※敬称略

日程:1月27日(土)13:30回 ※上映後の舞台挨拶
場所:シアター・イメージフォーラム (東京都渋谷区渋谷2-10-2)
登壇者:アデラ・ソー(エヴァ役)、リム・カーワイ(監督)

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